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第160話

ギリギリの時間になってやっと起きた俺は準備をしてからユキを起こした。ユキは今日もシロと留守番をしたいと言う。ユキが望むなら別に構わないから「わかった」と言って冷凍食品の解凍の仕方や何やらを教えてから家を出た。 「……げっ」 「げって何だ。」 早河は既に幹部室の自分の席について珈琲を啜っていた。目の下の隈は相変わらず。昨日も寝れなかったのか?なんてわざわざ聞かなくてもわかる。 「何でお前が無理するんだ」 「…何の話だ」 「惚けんなよ。」 さすがにイライラして早河の胸ぐらをガッと掴む。それでも眉一つ動かさない早河はゆっくり俺を見てからニヒルに笑った。 「……いちいち鬱陶しい」 「お前がそんな情けない顔してるからだろうが」 「お前のそういうところが昔から大嫌いだ」 そう呟いて俺の手を胸ぐらから離させる。いつもの無表情に戻った早河は何事もなかったかのように仕事を始めた。 早河と同じ部屋にいることが気まずくて廊下に出て適当にぶらぶら歩く。 途中でこれから学校に行こうとしてる若に会って「送ってくれ」と言われ車をだした。 若は車内でずっと話をしてくれる。それは気を紛らすには最高だった。若の話だから何があっても聞かないとという使命感みたいなものがあるから余計なことを考えて入られないから。 「───で?命は何をそんなに焦ってるんだ?」 突然真剣な声音、焦ってるってなんだ。俺は焦ってるのか? 「…焦ってる、とは?」 「あれ、違う?最近早河の様子がおかしいし、お前も何だか今日は落ち着きないし。俺は早河のことで焦ってると思ってたんだけど。」 その言葉につい自虐的な笑みが漏れた。この人にはお見通しらしい。 そりゃあ人の上に立つ人。周りの人間の変化には誰よりも気づくのが早い。 それはいつ、どこで、誰に狙われてるかわからないから。自分の立場を理解されている証拠だ。 「…早河は…俺が鬱陶しいみたいです」 「へぇ。命と早河って仲良いのになぁ。あれじゃね?早河に入り込みすぎてんじゃね?仲良いつってもあいつにも保ちたい距離があるだろうし」 「……そう、ですね」 「でも、命はそれだけ早河が大切なんだよな!…お前早河が大好きなんだな!!」 「ははッ…」 なんだか少し胸が苦しい。

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