161 / 240

第161話

若を学校に送った後、ゆっくりと組に戻って車を止める。俺は早河に謝るべきなのだろうか。…いやそんなことはないだろう。 自問自答を繰り返して結局は謝らないことに決めて幹部室に戻るのは嫌だったから、親父のもとに行く。今茉美はどこにいてどういう状態なのかも聞きたかったし丁度良い。 大きなドアをノックした。 「誰だ」 「命です。」 「入れ」 「失礼します。」 言葉を交わして中に入ると親父がどうした?という目で俺を見ていた。 「…あの…芦屋茉美は…」 「あいつはそろそろ退院だと思うが…お前が助けたんだってな、どうするつもりだ?」 「あいつは俺から見ても可哀想な奴だと思いました。三女は親父が見られてるんですよね…?できることなら茉美と三女、二人でこの世界とは違う、綺麗な表の世界で生かせてやりたいです」 「…いきなり二人でって言ってもあいつらには難しいだろ」 「二人で生きていけるまで、俺が面倒見ます。」 そう言ってお願いしますと頭を下げる、親父は「わかった、ちょっと待ってろ」と言って部屋を出て行った。 親父の部屋に一人って居づらくてキョロキョロ辺りを見る。全く落ち着かない。 「待たせたな」 「あっ、いえ…」 親父が部屋に帰ってきた。後ろには無表情の女を一人つれてる、あいつが芦屋の三女か…? 「こいつは奈緒(なお)だ。芦屋奈緒。」 「……………」 口をきいてくれないというのは早河から聞いていた。だから奈緒が何も言わず俯いていても何とも思わない。 「奈緒、命だ。命がお前の姉の茉美とお前で暮らせるようにしてくれる」 「…お姉ちゃん、と…?」 ボソッと呟いて俺を見た奈緒は泣きそうな顔をした。無表情が崩れた、家族というのはすごい力を持っているのだと改めて感じる。 「茉美はもう少しで退院できる。それまでに俺と二人で新しい生活の準備をしていこう」 「…命…さん…」 「よろしくな、奈緒」 頷いた奈緒は柔らかく微笑んでいた。 奈緒としばらく話してから親父に許可をもらって二人で茉美の様子を見に行くことに。 車内の中で奈緒は自分のことを話してくれた。 自分はあの日何があったのかがわからなかったと、何で自分の家族をバラバラにしたやつなんかに保護されてるのかと。怒りと不思議な気持ちで口を利かなかった。というより利きたくなかったらしい。 「お前の親父と母親と長女の美織だったか…?そいつらにはもう会えないと思っとけ」 「……茉美ちゃんには、会えるんですよね…」 「今から会える」 「…命さん…ありがとうございます」 涙を堪えているのだろう。声が震えていて…それに気付かないふりをした。 ついた病院の個室。 ノックをすると「はい」と返事が返ってきた。 「二人で話してこい」 「はい」 俺なんかより家族の奈緒に会えた方がきっと嬉しいだろう。しばらく二人にしてやろう。個室の前の壁に背を預けてしばらくそのままボーッとしていた。

ともだちにシェアしよう!