「起きろ」 低い声が聞こえて目を開けるといつもと変わらない様子の早河がそこに立っていた。 「お前はここに寝に来てるのか」 「…………」 正直早河と話したくなくて、無視して自分の席に座る。幹部室では赤石と八田と中尾、全員が自分の席に座っていて…。八田はわかるが、中尾と赤石、テメェらいつも遊び呆けてるじゃねえか。裏切りやがったなと心の中で舌打ちをした。 「命、聞いてんのか」 「うるせえなぁ！人の話を聞かない奴の話なんて聞く気ねえよ！」 俺悪くないし。悪いのは俺の話をちゃんと聞いてくれない早河だし。 「……さっきは悪かった」 早河が俺にだけ聞こえる声の大きさでそう言った。早河が謝ってきたことに驚いて目を見開く。 「え、おう」 「…話がある」 ここじゃあ話しにくそうだったから、幹部室を出て廊下を少しいったところで話をすることに。 「話って？」 「………セックスしろって、言われて」 「は？誰に？」 「八神に」 「八神…って高校生だよな？そいつがお前に抱かれたい…ってことか？」 「……らしい」 夜眠ろうとしてベッドに入ると、八神が早河の上に素早く乗ってきて服を脱ごうとするらしい。気が気でない早河は自分が神経質なこととそんな事が重なってなかなか眠れない。だとか。 「お前八神にそこまで好かれるようなことしたのか？」 「……わかんねえ。」 「わかんねえことないだろ。例えば…八神が喜ぶ何かをしてやったりとかさぁ」 「あいつの喜ぶものなんて知らない」 これは、どうしたものか。 早河の顔は真剣で今冗談なんか言ったら殺されるかもしれねえもんなぁ。 「とりあえずちゃんと八神と話した方がいいんじゃねえの？」 「……ああ」 「もしそれでも八神がしつこくしてくるなら、その時は俺から話すよ」 「…悪い」 今の早河は少し体調が悪そうだ。組にある仮眠室に行って眠るように言うと、珍しく素直に言葉を聞いてそこに向かう。さすがに自分でも体調が悪いことに気付いたんだろう。 それを見送ってから仕事をちゃんとしないとなぁと幹部室に戻った。