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第165話
仕事を終わらせて帰りの車。昨日よりスッキリした気持ちで家に帰る。玄関を開けるとシロが尻尾を振ってそこで待ってくれていた。
「ただいま」
「ニャー」
シロを抱き上げてリビングに行く。ユキはいつも俺が帰ってきたらおかえりなさいって玄関にまで走ってきてくれるのに、今日はそれがなくて少し寂しい。
リビングのドアを開けユキはどこだろうと探せばソファーに丸まって眠っていて、慌てて毛布をとってきてそっと掛けてやる。
「冷たくなってんじゃねえか…」
ユキの腕を触るとすごく冷たくて、もっと早く帰ってこればよかったなんて後悔した。
***
「…んん……命…?」
「あ、起きたか。ちょうど起こそうと思ってたんだ。」
そろそろ飯ができそうだったからちょうどよかった。少しボーッとしてからハッ!となったユキが「おかえりなさい!」と俺に笑顔で言ってくれる。
「ただいま」
「晩御飯…なに…?」
「グラタンだ、こっちおいで」
テーブルをポンポンと軽く叩くと柔らかく笑ってソファーから降りた。
美味しそうに自分の作った飯を食べてくれるのは嬉しい。ユキは今も口周りにソースをつけて、美味しそうに食べてくれる。だから毎日ユキのために晩御飯を作るのは楽しい。
「命…!あのね…」
「ん?」
「お昼ね、ミートソーススパゲッティ、美味しかったの…」
「おお、よかったな」
「…だからね…」
モジモジして俺の事をちらっと見てはすぐに視線をそらしてしまう。
「何だよ」
「あのね…っ!今度、命の作る…ミートソーススパゲッティ…食べたいの…。だめ…?」
「だめじゃねえよ」
小首を傾げてそんなこと言われちゃ誰だっていいよって言うだろ。
「明日…!明日の夜ご飯、それがいい…!」
「わかった。」
フォークを握って嬉しそうに笑うユキにつられるように笑って。
「ユキ、落ちてるぞ」
「えっ…あ…ああ…!」
フォークから落ちたグラタンがテーブルに着地した。それをユキに教えてやると途端、泣きそうな顔になる。
「…ごめん…なさい……」
「次から気を付けたらいい」
そう言うとユキは目に涙を溜めて悲しそうに口を歪めた。
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