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第166話
風呂に入ってアヒルに向かってユキが話しかけているのを見て癒される。そんな姿が酷く可愛くて無意識に口角が上がっていた。
「…暑い…」
「おう、上がるか」
風呂を出て服を着るとユキは走ってシロのもとに向かう。そんなユキから逃げるように俺のところに来るシロ。これはいつもの光景。
シロはニャーと足元で一度鳴いた。
「…シロくん…僕はぁ…?」
「追いかけられたら誰だって逃げたくなるだろ?ゆっくり近づいて撫でたらいいんだよ」
「……うぅ…」
肩を落として拗ねるようにそこにしゃがみこんだユキに近づいて、髪をふわふわ撫でてやると顔をあげて嬉しそうに微笑んだ。
「…だ、抱っこしてほしい…」
「いいよ、おいで」
しゃがんでシロを撫でてからユキに向かい腕を広げる。飛び込むようにやって来たユキを強く抱き締め立ち上がった。
ユキは重たくなった、初めて会ったときよりずっと。
「重たくなったな」
「…重たい…?…僕、降りる…?」
「このままでいい」
ここにユキがいるってちゃんとわかって、安心する。
それに、ちゃんと大きくなってくれてると実感できる。
髪も乾かして、しばらくするとうとうとしだしたユキ。ユキとシロと寝室に行きベッドに寝転ぶと、全く眠たくなかったのにあくびが出た。
「明日もシロと留守番するのか?」
「…だめ…?」
「そうじゃねえけど…」
シロの大きな目が俺を見る。大きくあくびをして掛け布団の上、俺とユキの間に小さく丸まった。
「シロくん、一人寂しい……」
「ユキは?寂しくねえか?」
「命いないの、たくさん寂しい…」
すりすりと寄ってきて体を俺とくっつけたユキは「んー…」と唸ってから話さなくなった。
呼吸音だけがする部屋で、ユキの寂しいを何とか解消してやりたいと解決策を考える。
けど、俺がいなくて寂しいなんて可愛いよなぁ。
ふわふわしてるユキの髪に指を差し入れてとかしていく。
同じ石鹸、シャンプーなはずなのにユキからは甘い匂いがして不思議だ。
「どこか、遊びにつれてってやるか」
結局はそんなことしか思い浮かばなかった。
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