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第168話

結局水族館と図書館に行くことは決まったが後は何も決まらずにその日が来てしまった。 とりあえず今日一日は水族館。 ユキがイルカさんいたら写真を撮るんだと言うから昨日俺はわざわざデジカメを買ってきた。 「はぐれないように手繋ぐぞ」 「うん…!」 手を繋いで中に入ると思っていたよりも中が暗かったらしくてユキは「わっ!」と小さく声を上げて俺の方に体を寄せた。 「歩きづれぇよ」 「でもぉ…」 「大丈夫だ、ちゃんと手だって繋いでるし、離れたりしねえよ」 「…うん」 ユキの気分は少し下がり気味。ここに来る前に暗いぞって言ってやればよかったかな、でもずっと暗い訳じゃねえし。 「ほら、魚いっぱいいるぞ」 「…ん…わぁ…」 ユキに魚がいるぞと言ってやると俺から少し体を話して魚たちの泳ぐ水槽を見て感動していた。 「お魚…キラキラしてる…」 「こうみたら綺麗だなぁ」 「命、お魚好き…?」 「……いやぁ…」 むしろ魚の顔を見たらなんか、うわー…って思っちまうんだよなぁ。 「命、お魚怖いの…?」 「怖くはない」 強がってそう言ってみたけれど、本音を言えば少し怖い。あるはずが無いけれど、あの目が何かを伝えてきそうで怖い。 暫く歩くとユキが楽しみだと言っていたペンギンのコーナーに来た。ペンギンの向かってカメラを構えるユキだけれど、ガラス越しだからどうしても自分の姿が写ってしまって頬を膨らましている。 「…ペンギンさん……」 しょげたユキはそのまま端っこにあるベンチに「疲れた」と言って腰を下ろした。 「写真うまくとれなくて悲しくなった?」 「違うぅ…ちょっとだけ、休憩なの…」 「そうか」 そのわりに悔しそうな顔してる。そう思ってクスッと笑った俺に怒ったらしいユキは「何で笑うのぉ…」と俺を睨んでるつもりなんだろう。 「怒るなよ」 「怒ったら、僕、嫌いなる…?」 「ならねえよ」 「じゃあ、怒る。笑っちゃだめ…!」 俺の顔を両手で包むみたいに押さえて「ダメ!」と言う。 「わかったわかった。…ほら、アイス買ってやるから機嫌直せ」 「アイス!」 パッと手を離して喜び出す。単純だなぁと今度はユキにばれないように小さく笑った。

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