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第182話
男を寝かせてからトラと二人になって話をする。
「そうよ!最近ユキくんに会えてないから寂しいのよ!!」
「今度連れてくよ」
「言ったわよ!!連れてこなかったら今後あんたに何があっても知らないからね!!」
ふんっと俺から体ごと顔を背けてからチラリとこちらを覗くように見たトラはくすっと笑って俺に手を伸ばした。
「何か悩んでるの?」
「いや?」
「寂しそうな顔してるわ」
トラの手が俺の頭を撫でる、異様にそれが安心してふっと口元が緩んだ。
「悩んでるなら何でも話なさいよ。私にでも、早河にでも。」
「ああ」
「じゃあ私は帰るわね、あの子の体調、良くならないようならまた呼んで」
「ありがとな」
玄関まで送って手を振り別れる。
幹部室に帰ると早河に奈央が俺を呼んでるって言われてちょっとだけ休んでから奈央のところに向かった。
「奈央?入るぞ?」
「…あっ…はい」
奈央の部屋に入ると少し甘い匂いがした。
「どうしたんだ?」
「あの、お姉ちゃんが…明日退院するって聞いて……命さんとどうするか相談しろって…」
「ああ、成る程。…とりあえず金のことは今は気にしないでいい、学校にも通わせてやれる。だからあとは家だよなぁ。」
まあ家は奈央と茉美が相談して考えて選べばいいし。
「明日、茉美が退院してから家のことを決めよう、それから買い物行って……」
「あの、家は、もう…お姉ちゃんと相談してて…」
「そっか、なら買い物だけでいいな」
それだけ決めてすぐに幹部室に戻ると仕事(と早河)が面倒くさいから少し奈央の部屋で寛がしてもらうことにした。
「あの、命さんは…お一人で暮らしてるんですか…?」
「いや、二人だ」
「…彼女、さん?」
「まぁ…そんな感じ…?」
ユキのことを思い浮かべると気づかないうちに口端が上がっていた。
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