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第187話

「八田ー!」 幹部室に入ると八田だけがそこにいた。 「あの男のこと色々決まったから聞いてこいって親父が」 「ああ。あいつも呼んだ方がいいな」 八田があの男にだろうか、電話をしてすぐに来るように命令していた。3分くらいで幹部室にきた男は昨日とは違い顔色も悪くない。 「名前は世那(せな)だ。親父がつけた」 「世那です。お願いします」 頭を下げた世那によろしくな、と返事をする。 「世那は1週間くらいそれぞれ幹部の下に仮としてついて、それからどこにつくか決めるって」 「へぇ、今は?誰についてんの?」 「俺」 「世那よかったな。一発目が早河じゃなくて」 一応幹部の名前は覚えているみたいだ。早河の名前を聞いて世那は苦笑をこぼした。 「八田は優しいからな、八田が一番でよかった。手取り足取り教えてくれるさ」 「はい…」 「明日は?誰につくんだ?」 「明日は中尾だよ。あいつは滅茶苦茶だし仕事もあんましねえし意味ないと思うが……」 それなら赤石も一緒だろ。と笑う俺と八田、控えめにクスッと笑った世那はこの前とは違い鋭い目ではなくて穏やかな優しい目をしていた。 「その次が早河だからな、あいつは怖い。気を付けろよ」 「まあ、何かあったら言えばいいし。」 「ありがとう、ございます」 世那は柔らかく笑う、それを見てきっとこいつは大丈夫だな。と安心した。 世那からは黒幕の話を聞いた。山瀬組というところからここを調べてくれと依頼されたらしい。それに失敗しても成功しても金をやるが手を抜いたりしたら殺す、と。そしてその事を俺たちに話せば妹を殺すと言われたとか。 「金欲しさに何でもするからそんなことになるんだよ」 「…はい」 「そんなに金に困ってんのか?」 「…俺の家、母子家庭で母さんがいつも働いてくれてたんですけど、そのせいで倒れちゃって…。来年は妹が高校生になるから、手っ取り早く纏まった金がほしくて…」 こいつなりに考えて行動した結果なんだなと思うと少し寂しい気持ちになる。 「親父は前から山瀬組に目をつけてた。あそこは好き放題やりすぎだってな。ちょうどいいタイミングだ。山瀬組が潰れたらお前は自由になれる。」 「でも…」 「山瀬組を潰すためにお前には働いてもらわなきゃいけねえからな。頑張れよ」 八田がそう言うと世那は頷いて「よろしくお願いします。」と頭を下げた。 「さーて、じゃあ俺は茉美と奈央と話したら帰ろうかな」 「あん?まだ16時にもなってねえだろが。」 「今日はユキをトラのとこに預けてんだよ。迎えにいかねえと。ついでにトラにも話したいことあるし」 「そうかよ。」 八田と世那に手を振り、茉美と奈央のいる部屋に向かった。

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