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第191話

あんなことがあった2日後。茉美と奈央の住む家は決まり家具も買って、昨日からそこで住み始めている。 「んん、命ぉ…」 「どうした?」 朝、コーヒーを啜っていると眉を寄せて俺を見上げるユキ、手は腹をさすっている。 「気持ち悪いぃ」 「え、」 「ぅ…うぅ…」 俺に手を伸ばす。けれどすぐにしゃがみこんだ。 「ユキ!?」 「う、くぅ…んっ」 「トイレ行こうか」 「ぅん…」 ユキを横向きに抱き上げてトイレに行き吐いてもいいぞと背中を擦って促すけれど吐き出せないらしい。 「出ないか?」 「う……うぇ…っ」 「ユキ、口あーって大きく開けて」 言った通りに口を大きく開けたユキ。そこに指を2本、奥まで突っ込んだ。 「う"…え"っ…」 「大丈夫大丈夫」 そうすることでやっと吐き出せた。ユキの額をさわると熱くて熱があることがわかる。 「口、濯ごうな」 「んん…」 立てないユキを抱えて洗面所に行き口を濯がせてベッドに運んだ。 「トラ呼んでくるから待ってろ」 「…やだぁ…命…みこと…」 「……携帯だけ取ってくる。すぐ戻るからさ」 「やだぁ…」 泣いて俺の服を掴む。仕方ない、辛いかもしんねえけど一緒に移動するか。 「ちょっとごめんな」 「ん、」 ユキを抱き上げリビングに行って携帯を掴み、すぐにベッドに戻って一緒に寝転ぶ。ユキはすぐに眠ったけれど、手は俺の服を離さなくて可愛いなぁ、なんて思う反面、辛いだろうな、と心配になった。 トラと、ついでに早河に連絡をいれて10分程するとトラが家に来た。 「あらあら、ひどい熱ねぇ」 「何度?」 「9度1分。んー、点滴した方が楽になるけど、嫌がるかしら」 「今は寝てるし、大丈夫だと思うけど……」 すぐに診察を始めてくれる。ユキは顔を赤くして眠ったまま。 「じゃあちょっと点滴させてもらうわね」 「ああ、頼む。」 服を捲ってユキの細い腕を出し、そこに消毒液の浸った脱脂綿を撫で付ける。 「うぅ…」 「あ、起きちゃった?」 「…トラさん…?…っ…!…何するの…っ」 点滴の針を見た瞬間暴れだしたユキ。暴れるっていっても体が辛いからかそんなに大きくはなくて、ユキを座らせ抱きしめればそれも無いものになった。 「ちょっとチクってするわよ」 「やだ、やだぁ…っ…、んっ」 泣き出したユキの頭を撫でる。ユキが俺の胸に顔を埋めたタイミングでトラはユキの腕に針を射した。 「…うぅ…っ…ふっ…」 「ユキくん我慢できたわね、いい子ねぇ」 「…んぅっ……命ぉ…」 「よしよし、偉かったな」 しばらくするとそのまま眠ったユキをベッドに寝転がせて、俺は一安心、とため息を吐いた。

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