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第194話

ユキがトラのところに行くと言うので翌日、トラのところにユキを預けて俺は組に向かった。 「命さん、お願いします」 「おー、世那、よろしくな。昨日はどうだったよ。」 「早河さん、ですか…?えっと…優しいんだろうけど…ちょっと怖いです…」 「ハハッ、そうか」 苦笑いをこぼす世那に笑った。早河は普段は本当無表情だし、そりゃあ怖がられるか。 「さぁて、何すっかなぁ。暇だし稽古でもするか?」 「稽古?」 「ここにいる間は少しくらい鍛えておいた方がいいと思う。いつどこで誰に狙われるかわかんねえから」 「…はい」 というわけで稽古場に向かう。その途中で赤石に会って無視して通りすぎようとすると「待ってよー!」と肩に腕を回された。 「どこ行くの?稽古場?」 「ああ」 「…あー、世那を鍛えるの?俺も混ぜてよー!!」 「来んな来んな」 「行くしー!!」 結局ついてきた赤石。「お前がいたら面倒なんだよ」と言うのに「聞こえませーん。」と耳を塞ぐこいつにイラっとした。 「…んで、こうこられたら…足だして…」 「みっちゃんみっちゃん!一回俺たちで見せた方がいいんじゃない?見ないとわからない動きとかもあるでしょ」 「……お前最後までする気だろ」 「あったり前じゃん。勝負も兼ねてさぁ、やろ?」 そう言って世那を隅にやり個人個人で鍛えていた組員たちをも隅にやって俺と赤石でやることに。 「みっちゃんとやるのなんて久しぶりだからなーんかドキドキする」 「言い方気持ち悪い」 「俺、ドキドキしちゃうっ」 「気持ち、悪いっ!!」 言葉と一緒に回し蹴りを繰り出した。ひょいとそれを避けた赤石は地面をうるさい音を立てて蹴り、俺に真っ直ぐに向かってきた。どうくるのか構えて赤石を見ていると斜めに跳躍。俺の頭を狙って横から流れるように速いスピードで回し蹴りを返される。 しゃがんでそれを避け、そのまま赤石の顎を狙い下から拳を突き上げる。まだしっかり着地していなかった赤石は避けるためにわざとぐらっとバランスを崩して、顎に入るはずだったそれを頬で受け止めた。 「いったぁ!みっちゃん本気じゃんかぁ!!」 「お前だってさっき飛ばす気で来ただろうが!」 「そりゃあ一回くらいみっちゃん飛ばしてみたいじゃん!!」 そんな会話を交えている間も赤石の攻撃は止まらない、防戦一方な自分は赤石の体力が無くならないかな~とゲスいことを考えていたり。 「一発も入んないしっ!」 「甘いんだよっ!」 拳を突きつけられてそれを避け赤石の後ろにサッと回り首に手刀を落とす。 「…う"………」 「はい、終わり。誰か赤石頼む」 赤石は気絶してガクンと崩れた。それを支えそう言うと組員たちが集まって赤石を稽古場の隅に寝転ばせる。 「───でだ。こんな感じだが…わかったか?世那」 「……わかんないです。」 困ったものだ。 「本能だな、もう本能しかねえな」 「えぇ…俺そんなダメですか」 「いや、ダメじゃねえけど。今の感じだとすぐ殺されんぞ?もっとキビキビ…はっ!!って感じ。わかるか?」 「…わかんないです。」 何で伝わんねえんだ、と頭を抱える俺を目を覚ました赤石がケラケラと笑う。 「みっちゃん、そりゃわかんないよぉ。『キビキビ、はっ!』って何?俺も聞きたいもん、ブフッ…!」 「早河ならわかってくれるし…」 「残念、俺は早河じゃないよーん。なんなら通訳で早河呼ぶ?」 「いらねえわ!」と返事をしてから、あいつを呼べばいいんじゃねえか?とひらめいて携帯を掴み奴を呼んだ。 「命さぁん、おはよーございますー!」 「ゲッ!!鳥居じゃーん。」 鳥居が稽古場に来た途端顔を大袈裟に歪めた赤石。 「おはよ。悪いんだけど俺の教え方分かりにくいみたいだからお前教えてやってくんね?」 「おお!?命さんが俺を頼ってるぅ!いいですよ~!」 「頼むな、俺ちょっと休憩」 隅に腰を下ろして組員が持ってきてくれた水をコクコク飲んだ。

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