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第203話
家に帰って今日は留守番していたユキを強く抱き締める。
もし俺が死んだら?ユキが一人になったら?……俺が死んでも困らないようにしておいてやらなきゃいけない。
苦しそうに腕の中で「うぅ…」と唸るユキにキスを落としてそのままベッドに運ぶ。怖がらせちゃいけない、自分が今こんな状況だからってユキに八つ当たりをしてはいけない。そう思うのに。
「…命、寝んね…するの……?」
「しない」
「僕…、僕…お腹すいたの…」
「ああ。」
「…ご飯、なあに…?」
何も知らないユキに跨がり、ユキの首筋に顔を埋める。舌を這わせるとビクビクと震えて俺の服を掴んできた。
「命ぉ…んっ…ぅ…」
「悪い、本当…ごめん……」
「い、いた、痛いっ、うぅ…」
そこに噛みついてユキの服の裾から手を差し込んだ。すべすべの肌を撫でて、夢中になってしまって。
「…いやぁ…やだ、…命ぉ…んんっ、ふぅ…っ」
ユキが泣いて嫌だと叫んだ。その瞬間熱が冷めて冷静になって、何をしてるんだと自己嫌悪に陥る。
「…ごめ、…ごめん」
「ん、ふぅ…命ぉ…」
「嫌いに、ならないでくれ…」
ユキを抱き締めてそう言うと背中に腕が回される。
「僕、命…嫌い、違うっ」
「ああ、ありがとう」
「もう痛いの、やだ…っ」
「ああ」
「僕のこと、食べる…ダメ…。お腹すいたら、ご飯食べるの……」
腹がへったなら飯を食えと言っているみたいで。俺はクスクス笑う。そういう意味でお前を食べたいわけじゃねえんだけど、と。
「じゃあ、飯作ってくるよ」
「僕も!お手伝い、する…!」
「じゃあ、一緒に作ろう」
あと何回こうしていられるのだろうかと考えることしかできなかった。
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