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第204話

「───だから、もし俺に何かあったらお前にユキを任せたい」 「無理よ」 「何でだよ」 「あんたそれで安心して帰ってこなさそうなんだもの」 次の日、俺はトラのもとへ来ていた。トラにユキのことを頼めないかと言っても聞いてくれない、俺を見てくれもしない。 「んなわけねえだろが。」 「あるでしょ。"ああこれでユキは大丈夫だ。俺がいなくても安心だ。あいつは無事に生きていける"」 「…うるさい。」 「でもそう思っているんでしょ?もしそうなら嫌よ。ユキくんには悪いけど、私はあんたも大切なんだから。」 フンフンと鼻唄を歌いながらリップクリームを塗るトラ。ぱっと音をならしやっと俺を見て柔く笑った。 「ちゃんと帰ってくるって約束するなら、いいわよ。」 「…約束する。俺だって生きていたい」 「そう。…ならいいわ。例えば、仮に、あなたが死んだなら。ユキくんは私が面倒を見る。」 少し切なそうに、眉をハの字に下げて笑うトラ。そんなトラに抱きしめられて、泣きそうになった。 「ユキ~、風呂あわあわにするやつ買ってきたから今日するか?」 「する…!あわあわ…!」 顔の前で両手を合わせて嬉しそうに笑うユキ。可愛らしくてユキを抱き上げ一緒に風呂場に向かってそれを用意した。 「これ、あわあわなるの…?」 「なるよ、あわあわにな」 「それ入ったら、体洗う、しなくていいの…?」 「洗わなきゃいけねえよ。」 「あわあわ、なのに…?」 「あわあわなのに。」 残念そうに「えぇ…」と言って俺の顔を見るユキだけど、そんなことされても無理だぞ。 「お風呂、まだぁ…?」 「んー、もうちょっと」 「用意、する…!」 「おう」 バタバタと走って服を取りに行くユキについて俺も取りに行く。どれにしようかなーってユキが選んだのは俺のTシャツ。まあ、いいけれど。 「命の匂い、好き…これ、いい…?」 「いいよ」 「ふふっ、ありがと、ございます…」 服に顔を埋めるユキ。そろそろ風呂もいい感じかな。ユキを抱き上げて風呂場に向かいつけていたシャワーを止めてさっさと服を脱ぐ。 ユキの目を両手で覆って風呂に入ってから手を離すと大量のあわあわが目に写ってユキは「わぁー!!!」と大きな声をあげた。

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