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第208話

「いってくるな」 「…いって、らっしゃい……」 ユキは笑顔を見せてはくれなかったけれど、それでも俺は笑顔を見せて家を出た。 車に一人乗り込んでから一気にドンとしたものが上から押さえ付けてくるような、そんな感覚に陥った。 昨日たくさん泣いたユキは、朝起きたら瞼が腫れていて本当に申し訳なく思った。朝食もほとんど残していて少し悲しかったり。 「…自業自得だけど。」 車を走らせて組みに着き葉月に車を預ける。 「命さん?どうしたんですか?」 「何が」 「何か…暗い?です」 「そんなことねえよ」 葉月から逃げるように幹部室に入る。珍しいことに幹部全員がもうそこにいて、ああ本当にすぐ目の前に迫ってるんだなぁ。 「みっちゃんおはよー!」 「はよ」 「何かみっちゃんがみっちゃんじゃない!!おかしいよ!ねえ!早河もそう思うよね!」 うるさく話してる赤石を無視して自分の席に座った。 「命、ユキくんに話したのか?」 「え…何でわかんの」 早河と二人きりになった時間、唐突にそう聞かれて驚いた。 「お前が凹む理由は最近じゃユキくん関係しかねえだろ」 「そうかぁ?…まあ、そうか。」 「で?」 「そうそう、ユキに話したよ。明後日トラのところに泊まりに行ってくれって。でも迎えに行けないかもしれないって。」 組のことで死ねるのは本望だったはずなのに今じゃあ違う。ユキがこれ程までに俺の中で大きな存在になっているから。 「ユキくんは…?」 「仕事に行かないでって」 「そうか。」 早河は悲しそうにふって笑い、ゆっくり目を閉じた。

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