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第215話
「行くぞ」
玄関の扉を開ける。俺とユキとシロ、並んで家を出て、鍵をしっかり締めてからユキにそれを渡した。
「…何で…?」
「ユキのところに帰ってこねえと、俺が家に入れないだろ?だから、ちゃんと帰ってくるよって言う約束だ。」
「…やく、そく…」
「俺が帰ってきたときにそれを返してくれ」
「うん…!」
エレベーターに乗り、エントランスを出て駐車場に向かう。ユキと手を繋いで、車に乗るときは残念だけど手を離して。
「繋ぐの…!」
「わかってるよ」
乗り込んでから、また手を繋いで。
シロはニャーニャーと小さなゲージの中で鳴いている。車が好きでないのか、これからどこにつれていかれるのかと不安なのか。
「シロくん、大丈夫だよ…」
ユキの優しい声が耳に届いて心地いい。シロもそれに安心したのかニャーとは鳴かなくなって、大人しくなった。
「ユキくんに命、それにシロくん、おはよぉ!」
「おはよう」
「…おはよう、ございます」
やけにテンションの高いトラに迎えられ、ユキとシロを預ける。それから金のことを話すと、「わかったわ!」とウインクをされた。
「ちゃんと帰ってきなさいよ!」
「わかってる」
「ユキくんとシロくんは、私が責任をもって見ていてあげるから。」
強い男の力で抱き締められて苦笑をこぼす俺にヘヘンと胸を張るトラ。
「帰ってこなかったら、本当に怒るから。」
「ああ…そりゃあ怖いな」
「そうよ~、私が怒ったら誰も止められないんだから!」
トラはケラケラと割っているけれど、ユキは俺とトラを見て寂しそうにしていて、でもここでユキを抱き締めたりなんかしたら行けなくなる気がして。
「いってくる」
静かに告げて、車に一人、乗り込んだ。
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