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第222話
開いたドアからは、トラと…小さい子供。
そいつは俺と目があった途端泣き出してこっちに走ってきた。俺に抱きついて、地味に腹が痛い。けれどこいつが誰かわからなくて困惑するしかない。
「…命…命っ…」
「……お、い…鳥居…」
鳥居に助けを求めて視線を投げるのに、何故だか唖然としていてそこから動かない。代わりに早河が動いて子供を俺の上から降ろした。
「ユキくん、今、命はちょっと起きたばっかりで頭がボーってしてて何もわかってないから、もうちょっと待ってやってくれる?」
「…命、しんどい…?」
「そう。だから俺とトラと一緒にちょっと外にいこうか」
「…うん…」
早河が子供とトラをつれて外に出ていく。早河は子供相手だとあんな風に優しくなるのかと思うとおかしくて笑えた。
「みっちゃん…?本当に覚えてないの?」
「さっきの子供のことか?…覚えてねえけど、誰の子供だよ」
そう言うと赤石は顔を歪めて「ううん…」と質問の答えにならないことを言われて眉を寄せた。
「ユキくんは…命さんの家族ですよ…?」
「はぁ…?」
鳥居の頭はおかしくなったのだろうか。俺に家族なんていねえし、強いて言えば浅羽組の奴等だけだ。
「ああ、あいつも親父に拾われたのか?」
「……拾ったのは命さんですよ。」
頭の中にはてなマークが大量発生している。
「俺が子供を拾うわけねえだろ。」
「…命さん、お願いですから、思い出して」
泣き出した鳥居に焦って、あの子供を拾ったのは自分なんだと、それは嘘じゃないんだとわかって。
「…ユキ……?」
ユキって子供の存在を思い出すようにある記憶を巡るけど頭が痛くなるだけで思い出すことができない。
「まあ、焦らなくてもユキくんと生活してたら思い出すんじゃない?」
赤石の言葉に顔をあげてうんうんと頷いた。あの子供が、記憶のない俺に耐えられるなら一緒に生活してみたい。もしかしたらその内に思い出すかもしれない。
俺が起きたことに泣いて喜んでくれるほど、あいつは俺と仲がよかったんだから、きっと思い出さないといけない存在なんだ。
「でも…ユキくんがいいって言っても、それをトラが許すか、だけどね。」
トラはユキを大切にしてるらしい。
「ユキくんが傷つくようなことをさせたくないのは当たり前でしょ?」と赤石が苦笑をこぼした。
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