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第223話 ユキside

「嫌よ。」 赤石さんとトラさんがお話をしていて、トラさんはお顔を怖くて嫌々ってずっと繰り返してた。 「記憶喪失なんて知らないわ。だいたい何で忘れたのがゆ…、忘れたのがあの子なのよ。」 「俺にだってわかんないよ。でもみっちゃんも思い出したいって思ってるからそう言ってるんだし、傷つけることは、そりゃああると思うけど……」 「ほら!あるんでしょう!!無い訳が無いわよね。大切な人に自分のことを忘れられたら誰だって傷付くもの。」 「まだ、私だったらよかったのに……」そう言ってお目目を片手で隠したトラさん。泣いてるの…?嫌なことがあったの…? 「でも、ユキくんにも話さなきゃいけないでしょ。最後に選ぶのはユキくんだよ、俺達はユキくんが選んだ答えに何にも言えない。」 「わかってるわよ!赤石、本当あんたムカつくわ」 「奇遇だね、俺もお前にムカついてたところだよ」 怖い顔をして睨みあってる二人。その後ろで僕たちを見てた早河さんが僕の前にしゃがんで「いいかい?」と話しかけてくる。 「命は、一部の記憶を失ったんだ。」 「……記憶…覚えてないの?」 「そう。その一部の記憶って言うのが………ユキくん、君と一緒にいた時間の記憶なんだよ。」 「…僕と一緒の時間…?」 顔を歪めた早河さんは僕の肩を痛いくらいに掴んだ。 「……命は、ユキくんのことを忘れてるんだ。」 その言葉の意味がわかるまで時間がかかっちゃって、わかったときには僕のお顔にはたくさんの涙が流れていた。

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