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第226話
「…大丈夫、違う」
「大丈夫だ」
「大丈夫違うのぉ…!」
いや、俺が大丈夫って言ってるんだから大丈夫なんだよと言いたくてもユキには言えない。
だって、この怪我のせいで、何らかのショックで、ユキのことを忘れてしまってるんだから。
「……ごめん」
「んんっ…違うの、謝る、やだ…」
どうしろって言うんだよ。少しちょっと苛々してしまう。
「どうしてほしいんだよ」
「…怒る、するの…?」
「違う。俺にどうしてほしいのか教えてくれ」
「…………」
口をグッと閉じたユキは俯いた。
「……て……ほしいの……」
「は?なんて?」
「…僕のこと、思い出して、ほしいの……」
そう言われて冷静になって自分が嫌になった。
風呂を上がって酒を飲む俺に不満そうな顔を見せるユキに「悪かったよ」と言うと首を左右に振って「やだっ」と言う。
「…早く思い出すから」
「うん」
「俺のこと、嫌になったらいつでも言え。」
「僕、命のこと嫌にならないよ…?」
「ありがとな」
ユキの髪を撫でてやると嬉しそうに笑って俺に抱きついてきた。そんなユキを抱き上げ膝の上に向かい合わせに座らせる。
「…ちゅー…する…」
「ああ?してえの?」
「…するぅ」
唇を尖らせて目を閉じたユキに戸惑いながらも触れるだけのキスをする。柔らかい唇がフルフル震えてゆっくり目を開いたユキは顔を赤く染めてふふっと優しく笑った。
頭がガンガンと痛くなる。眉を寄せると何を勘違いしたのかユキが泣きそうな顔になった。ユキを抱き締めて「お前が嫌なわけじゃないんだ」と言うと「どうしたの?」と俺の首に腕を回す。
「……寝るか」
「しんどい…?」
「ちょっとな」
頭が痛くて早く横になりたい。残ってた酒は勿体ないがシンクに流して、ユキを抱き上げ何かから逃げるようにベッドに入った。
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