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第227話

「───起きろ」 軽く頬を叩かれて目を覚ますとなぜか早河がそこにいた。 いつだったか、こんな光景を見たことがある。確かに俺はあの時もベッドから早河をこうして見上げていて 「……何でいんの」 「様子見にきた」 「あっそ、もうちょっと寝かせてくれよ」 「ユキくんはとっくに起きてるぞ。今リビングでテレビ見てる」 え、と時計を確認すると午前10時。あいつは飯を食ったのだろうか、慌てて起き上がるとフラッとして、目の前が一瞬白くなった。 「……飯作っててやるから、ゆっくりでいい、起きてこい」 「ああ…ありがとう」 早河が出ていってから額に手を当ててふぅと息を吐く。昨日の頭痛といい、さっきの感じといい、記憶を思い出せる予兆なのか何なのか。 「…本当、自分が嫌いになりそうだ」 一部のことでも覚えてないのがすごく嫌になった。 「命…おはよう、ございます」 「おはよ。ごめん、飯食ったか…?」 「僕、さっき食べたよ…!早河さん…作ってくれたの」 「そっか」 ユキの頭を撫でてから早河が俺を呼ぶ。テーブルの席につけと言うことらしくて大人しくそこに座った。 「…何か思い出したか?」 飯を俺の前に置きながら聞いてくる早河。横に首を振ると「そうか」と頭を軽く撫でられた。 「ゆっくりでいい」 「でも、ユキが…」 「ユキくんのことで焦るのはわかる。」 「……………」 「けど、お前のそんな顔は見たくない」 そう言われてどんな顔だよと笑う俺に、早河は「笑うな」と言って少し顔を赤く染め、視線を逸らした。

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