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第228話
朝食を食べ終わって早河と話をしていた。
「お前はしばらく休みだってよ。」
「おう」
「休みの間、無理はしない程度にユキくんが行きたいって言うところに連れてってやれ。」
「ああ」
早河が淹れてくれたコーヒーを啜ってテレビを見てるユキの様子を眺めた。少し時間がたって早河は腰をあげる。
「そろそろ帰るな。」
「あ、ありがとな。」
「いい、何かあったら呼べ」
ユキのところにいってユキにも「またね。」と言い帰っていった。
「…早河さん、ご飯美味しかったの……」
「ああ、うまかったな。」
「…ふふっ……」
頬を押さえて笑うユキの頭を撫でた。途端頭痛がひどくなる、無くしたらしい記憶の1場面が写真のように頭に浮かび上がった。
「…命…?」
「…風呂が、嫌い……」
風呂で倒れてたユキの姿が頭に浮かんで慌ててユキを抱き締める。
「命…?どうしたの…?」
「…なんでも、ない……」
鼓動が早くなる。
落ち着いてから早河に言われたことを思い出して「どこか行きたいとこあるか?」とユキに聞いてみると目を輝かせて「公園!」といった。
「わかった。服着替えて寝癖直したら行こうか」
「寝癖…僕、髪の毛…ボサボサ…?」
「ちょっとな」
グリグリと髪を押さえると嫌々と首を振るユキ。
「悪い悪い、服着替えるぞ」
「うん…!」
ソファーから降りてバタバタと足音をならして着替えの置いてある部屋に走っていったユキのあとを追って俺もその部屋に入った。
「…んん…直る…?」
「直るよ、じっとしてろ」
「しゃべる、いい…?」
「いいよ」
なかなか頑固なユキの寝癖を直してから自分も適当に髪をセットして財布と携帯だけをもって、さあ行くか。とユキに手を差し出す。
「抱っこぉ…」
「…わかったよ、おいで」
が、どうやらユキは手を繋ぐより抱っこの方をご所望らしい。ユキを抱き上げて家を出て鍵を閉め、エレベーターのボタンは押したいというユキをボタンの近くまでつれていったり……なかなか、面倒くさい。
マンションを出て公園へと続く道を歩く俺に向かって「今日はね」とユキが話し出す。
「あのね、ブランコするの…滑り台も、して…えっと…」
「公園、好きなんだな」
「…初めて、命に会ったの、公園なの…」
俺と初めて会ったのは公園……?
消えていた頭痛が突然酷くなって立ち止まる。「どうしたの?」って顔を覗いてくるユキ。「大丈夫」と言えば「違う」と頬を膨らまして怒られた。
「しんどいの…?お家、帰る…?」
「すぐ治るからいい。遊ぶんだろ?」
「うん…」
心配そうに顔を歪めるユキに小さく笑うとそれでも安心したのかユキもにっこりと笑顔になった。
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