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第229話
公園についてベンチに座り休む俺をちょくちょく確認しながら滑り台で遊ぶユキ。目が合うと手を振ってくるから手を振り返してやる。それがだんだんと面倒くさくなってくるんだけど決して嫌じゃない。
「もう、痛い痛いなくなった…?」
「ああ、無くなった。」
「よかったぁ」
滑り台を終えて一度こっちに帰ってきたユキ、「大丈夫?」と言われて首を縦に振ると「ブランコ、行こう…?」って。
背中を押してやればいいんだな?と立ち上がりユキと手を繋いで引かれるがままにそこに向かった。
「高い~!」
「手、離すなよ」
結構高くまで揺れるブランコ、手離さないかどうかが心配でじっと近くにいて確認して
「命、命…!僕、もう降りるぅ」
「んー、」
揺れる幅が小さくなってきてから鎖のところをもってブランコを止めるとユキが抱っこと手を伸ばしてくる。
「ブランコ楽しかったか?」
「うん…!お家、帰る…」
「そうだな、トラが来るみたいだし、そろそろ帰らねえとな」
シロって猫をつれたトラがいつ頃くるかわからないから早く家に帰らないと。
「じゃあ、帰るぞ」
「うん…バイバイ…」
公園にそう言ったユキに小さく笑いが漏れた。
家に帰ってきて昼飯を食ってしばらくするとピンポーンとインターホンが鳴った。
ユキと一緒に玄関の鍵を開けに行き、そのままドアを開けると
「トラ、参上ッ!」
ウインクをしてピースをしてるトラがテンション高くそこにいた。
ユキに関しては不思議そうにトラを見上げているし、トラが持っている小さなゲージの中ではシロと思われる猫がシャー!と怒っている。
「……入れよ」
「お邪魔しまーす。ユキくーんどう?命に嫌なことされてない?」
部屋に上がってもらって、早速シロをゲージから出してやると部屋を巡回するようにあっちにいったりこっちにいったり。トラと自分にコーヒーを淹れて、ユキにジュース、シロには水をやってから席についた。
「何か思い出したのー?」
「……ユキが風呂で倒れてたとこが写真をみてるみたいに頭に浮かんできたんだけど…」
「よかったじゃない、進歩よ、進歩」
テーブルに置いてた手をバシバシ叩かれてよかったよかったと口にするトラ。
「わっ」
トラとそうして話してると膝の上に突然白猫…シロが乗ってきて驚いた。そこから俺を見上げてニャーと鳴くシロに手を差し出すとペロペロと舐めてくる。くすぐったいのもあるし、シロが可愛いのもあってついつい笑ってしまう。
「あぁー!シロくん、ずるい…!」
「ニャー」
「僕の命なのぉ…!」
腰辺りにユキが抱きついてく。、よしよしとユキの頭を撫でると顔をあげて俺の膝に座るんだと言う。でも、シロがいるし…
「シロくん、交代するの…!」
「ミァー」
「嫌、違うぅ!」
ユキにはミァーが嫌に聞こえたようで、悔しそうに唇を噛んで目に涙を浮かべてた。
「泣くなよ。あとで抱っこでも何でもしてやるから」
「……ほんとぉ…?」
「ほんと。」
「だから泣くな、いい子だから。な?」
「うん…」
シロは相変わらずそこにいる、あくびをして小さくなり眠り始めた。
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