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第233話

パッと目を開けると何度か見たことがある天井が写った。確かトラの病院。どうやらベッドに寝かされているらしい。 「───あっ、トラさん!命、起っきした…!」 ユキの声がすぐ近くに聞こえて顔を横に向けると心配そうに俺を見るユキがいた。 ユキに手を伸ばして辺りなんて気にせず抱きしめた。ユキの柔らかい感触、匂い、全部、覚えてる。 「…ゆ、き…ユキ、ユキ…っ」 「命…?泣き虫さん、してるの…?」 どうしようもなく涙が流れた。 「……命、泣き虫さん」 「ごめんな、ユキ」 ユキを抱き締めたまま泣いてると後ろにガクッと引かれてユキから無理矢理離される。 「……トラ…」 「思い出したの?」 「ああ…」 「そう。とりあえず泣くのをやめなさい。そしたらいくつか質問させてもらうわ。ユキくん、ごめんね?ちょっと向こうのソファーに座っててくれる?」 ユキから離れるのが嫌でトラを睨むと「何よ。」と睨み返された。 「自分は誰で、あの男の子は誰なのか。教えて」 「黒沼命、浅羽組の幹部。あいつはユキ、俺の家族で恋人。」 「ちゃんと思い出したのね?」 「ああ。だからユキのところに行かせてくれ」 「いいわよ。歩ける?あんた5日間も寝てたのよ」 まじか。とトラの顔を凝視する。トラはクスクスと笑って俺の頭を撫でた。 「ユキくんごめんねぇお待たせして」 「…もう、いいの…?」 「いいわよ」 俺から行くつもりだったのに、トラが呼んできてあげるとユキをこっちにつれてきてくれた。 「命、しんどい、治った…?」 「ああ。」 「もう、大丈夫…?」 「大丈夫。ユキ…」 ユキをベッドの上にあげて向き合うように座らせる。ユキを抱き締めてから至近距離で見つめ合う。 「……キス、していいか?」 「うん」 ユキの唇に噛みつくように口付ける。苦しいと胸をとんとん叩くユキを無視して舌を絡ませ欲を満たす。 「ん…ふぅ…っ…」 「…ユキ、好きだよ」 「…みこ、と…?」 「遅くなって、ごめんな。」 ユキの目から涙が零れる。それを親指で拭ってもう一度触れるだけのキスをするとユキは柔らかく笑った。 「……思い出して、くれたの…?」 「思い出したよ」 「…うぅ…っ…」 首に腕を回し抱きつかれる。耳元でユキの泣く声が聞こえて何度もごめんと謝った。

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