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第3話

「俺は黒沼(くろぬま)(みこと)」 「みこと、さん」 「命でいい」 「み、命…何歳?」 そうだなぁ。こいつに本当の年齢を教えても、仕事になんの支障もないだろう。 「俺は22」 「…大きい、ね」 と話をしておいて、今更なんだが…そういやこいつに服着せるの忘れてた。 でも、下着はもう使い物にもならねえし…。とりあえず俺の服を着せればなんとかなるだろう。 「悪い、下着は少し我慢してくれ、服は…これ着ろ」 長袖の裏地がふわふわした肌触りのいいトレーナーを渡すとせかせかとそれを着て頬を緩める。 「これ、ふわふわ、あったかい」 「……ああ」 でも何だか少し危うい。 俺がいつも着ているトレーナーはこいつが着るとワンピースみたいになってしまっている。まあ、うん、可愛いからいいけれど。 「で、さすがに名前ないと不便だよな」 こいつに何かいい名前はないか。 サラサラしたストレートの少し色素の薄い髪。ぱっちりとした二重の大きな目、小さい鼻に薄い唇。 俺が今まで出会った奴らの中でもずば抜けて綺麗な顔。けれどさっきの男たちに打たれたのか頬は赤く腫れていた。 細いし肌は白いし、何だかすぐに消えてしまいそうな、そんな儚い感じがする。 「シロは?」 「……………」 流石にシロは犬や猫に付けるような名前だな。 これは無い無い。本人の反応も無いし、有り得ないとでも思ってるかもしれない。 「じゃあ、ユキってのは?」 「…!」 ユキって名前に大きく反応した少年。 「ユキ?」 もう一度名前を呼べばこくこくと小さく頷く。 「ユキ…僕、ユキ」 「そう、じゃあお前は今日からユキな」 「はい」 ユキはトレーナーの裾を握りながら嬉しそうにふわりと笑った。 なんとか少年の名前も決まったところだし、とりあえず… 「早河に連絡するか」 ベッドでゴロゴロするユキを横目に携帯を手に取り発信履歴の一番上、早河に電話を掛けた。 「…はい」 「俺、命。」 「今何時だと思ってる」 「緊急事態なんだよ。14才の子供拾った。」 「へえ。何で」 「犯されてた」 沈黙が走って、それから溜息が聞こえてきた。 「名前は」 「無いって、俺はユキって呼んでる」 「家は」 「それも無いって」 また、溜息。 「今から行く」 「寝たいから明日にしてくれ」 「…わかった」 「じゃあな」と電話をきってユキを見れば寂しそうな顔をして軽く俯いている。 「どうした?」 「寝る、しないの…?」 「そうだな…。あ、その前に風呂に入ってきていいか?」 「僕、ここいていい?」 「ああ、いろ。喉乾いてねえ?腹へってたり…」 そう言えばバッと顔をあげるユキ。そしてタイミングよくユキの腹も鳴った。ああ、喉も乾いてるし腹も減ってんのか。 「こっちおいで」 「うん」 ユキをベッドから下ろして、手を繋ぎながらリビングに出た。

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