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第6話
いつの間にか目の前に低い声の人がいてビックリした。
「逃げるぞ、走れるか?」
「…ぁ…足…動かな、」
役立たずの僕の足は言うことを聞いてくれなくてただ震えるだけ。
どうしようと一人焦っていたら男の人が僕を抱っこして公園から遠いところへすごい速さで走っていく。
怒っている声がたくさん聞こえてきたけどそんなのは今は全然怖くなかった。
しばらくした所で下に下ろされて、すぐに男の人が着ていた服を渡された。それを着てみればブカブカで僕のお手手は見えない。
でもそんなことは気にならないくらい寒くて、体はブルブルってなる。
怖かった。一人ぼっち、誰も助けてくれない。痛い、お尻と、それに何だか、お胸も痛い。
地面を見つめる。足に変な感じて見てみたら、お尻の中に出された液が流れ出てる。汚い。
「何でこんな時間に外にいる?家は?」
頭上から声がかかってボソボソ返事をする。
「ないの」
「名前は?」
「お名前も、ないの」
無いものだらけ。そんな自分が恥ずかしく思えた。
「おい、ついてこい」
低い声が僕を呼ぶ。頷いたのはいいけど僕の足はまだしっかり動いてはくれなくて、歩けばドテっと転げてしまった。
「はぁ…」
上から溜息が聞こえて慌てて謝って立ち上がり今度こそって足を前に出してみるけど、そうしたらふわりと体が浮いて男の人にまた抱っこされてた。
「ごめ、なさ…ぃ」
うまく声がでなくて聞こえたかな?って不安になるけどすぐに「気にすんな」と声が返ってきて安心した。
この人は優しい人なんだと頭の中で理解できた。
***
男の人のお家、そこに連れて来られて、僕の嫌いなお風呂に入れられた。男の人が貸してくれたパーカーを脱いで明るい場所で体を見られて恥ずかしい。
そこで思い出した。お尻の中のやつ、どうやって出せばいいんだろう…?「コレ…」と足に流れていたものを指差すと男の人はまた溜息を吐く。
「出してやるから、力抜いて俺に寄りかかれ」
そう言われて頷いて、言われた通りに男の人に寄りかかった。そうしたらヌルッとした指がお尻の中に入ってきて「…うっ」って喉の奥から声が出る。さっき三人の男の人に虐められてからお尻が少し痛くて、体を触られるのも少し怖くて体が震えてしまう。
少ししてお尻から指が抜かれてヘナヘナと地面に座り込んだ。
「おい、大丈夫か」
そんな僕にすぐに声をかけてくれる男の人は眉を寄せて僕の顔を覗き込んできた。「大丈夫」と言葉を返せば「後は洗えるか?」って聞かれてピシッと体が固まった。
「お風呂、怖い」
「はあ?」
「お風呂、一人、怖い」
お風呂で怖くて苦しいことをされてから僕はお風呂が嫌い。でもそんなこと何も知らない男の人は「大丈夫だから、入れ。」と言ってお風呂場から出ていってしまう。
迷惑をかけちゃダメだとシャワーを手に取ろうとするけど上手に力が入らなくてそれはやめた。
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