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第7話
掛けてあるシャワーをそのままで髪の毛を濡らす。
速くなる呼吸を何とか抑えてシャンプーとかかれたそれを頭にのっけて泡立てた。それを流して顔を洗って…体も洗って。
そしたら頭がふわふわしてしまって地面にそのまま頭の後ろ側をゴツンしてしまった。力が入らない、シャワーからお湯はずっと出ていて、早く止めなきゃ、って思うのに体はちゃんと動かなくて、また息をするのが速くなってきた。
少しずつ眠たくなってくる。嫌なことも思い浮かんできて胸が苦しくなって……もう、寝ちゃいそう…
「────は?」
突然お風呂場のドアが開いて男の人が驚いた顔で僕に寄ってくる。
「おいっ!大丈夫か!」
そう言って僕を抱っこしてくれるその人に僕は震えて抱きついた。
男の人はすぐに僕をタオルでくるんで、背中をぽんぽんってしてくれたり「大丈夫」って言ってくれる。ゆっくり深呼吸をして震えは止まった。もう大丈夫。
そんな僕の様子を見てた男の人は話し出した。
「悪かったな」
「…わるかった…?」
「ああ。風呂が嫌って、ちゃんとした理由があったんだな」
「ぅ…?」
どういうことだろう?意味がわからない。
悪かったって何がだろう。
「ああそうだ、お前、自分のこと話せるか?」
「自分の、こと…?」
「まず、何歳だお前」
「14さい」
「え、14!?」
ビックリした顔をする男の人は眉毛の間に皺を寄せたり、うんうんと何度も頷いたり。変なの。
あ!そう言えば、この男の人は何て名前なんだろう…?
「あのっ」
「ん?」
「…あなた、名前…」
いつまでも男の人って少し失礼だもんね。
「ああ、俺は黒沼 命」
「みこと、さん」
名前を繰り返し言ってみれば「命でいいぞ」と言われてちょっと困っちゃった。それでも言われた通りに命って呼んでみる。
「み、命……何歳?」
僕よりずっと大きいからきっと大人の人なんだろうな。
「俺、22」
わっ、やっぱり大きい。
「…大きい、ね」
って話をしていると命は突然思い出したように僕に服を渡してきた。
「悪い、下着は少し我慢してくれ、服は…これ着ろ」
長袖の大きなお洋服。ふわふわしてて気持ちくて思わずふふ、と笑った。
「これ、ふわふわ、あったかい」
「ああ。」
返事をくれる命さんの眉毛の間はやっぱり皺があった。
「で、さすがに名前ないと不便だよな…」
名前…名前なんてお母さんからも呼ばれたことはないから、何だか緊張しちゃうなぁ。
そうして僕の顔をジロジロみてくる命。命のお顔は綺麗だからそんなに見られたら恥ずかしい。
綺麗な黒い髪の毛に二重のお目目、高いお鼻に薄い唇。
命は名前を考えてくれていたみたいで
「じゃあ、ユキってのは?」
「…!」
と言われて思わず顔をあげた。
そしたらまたユキって言うから、うんうんって頷いてみる。
「ユキ…僕、ユキ」
「そう、じゃあお前は今日からユキな」
「はい」
名前をくれたのが嬉しくてお洋服を握って命を見てふふって笑った。
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