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第17話

命に新しい服を渡されてそれに着替える。お膝の少し上くらいまである長袖の…なんだったっけ、トレーナーって命が言ってた気がする。 それに昔、夕くんが置いていったらしい僕には大きいサンダルをはいてお外に出た。 「車で行くから、こっち」 「車…?」 車なんて初めてだ。命に「危ないから手貸して」って言われてお手手を出したらギュッて握ってくれる。 「車の通るところは危ないから、大人の手握っとくこと。」 「はい」 お外より暗い、車のたくさん並んでる大きな所を少し歩けばあった命の車。 「わぁ、かっこいい…」 「ここ座って。」 ドアを開けてくれた命に言われた通り、中に入って椅子に座る。そしたらバタンとドアを閉めた命は僕の乗ったドアとは反対側のドアから入ってきた。 「シートベルト着けれるか?」 「しーと、べると…」 「そう。これがそれ。着けるからジッとしてろ」 言われた通り動かないようにしていると、命が近くまで来てシートベルトをカチンと外れないように着けてくれた。 「車に乗ったらこれ、着けないといけねえの」 「車…すごいね…」 でもシートベルトは僕にはちょっと苦しかった。 優しい音楽が流れる車の中で僕は命に話しかけてるんだけど「あー」とか「うん」とかしか返してくれない。僕何か悪いことしちゃったのかもしれない。 こういう時は黙っているのが一番だって僕は知ってる。だってお母さんが僕のことが鬱陶しいって言ってよく打ってきたもん。 もし命が怒ったら女の人のお母さんより、男の人の命の方が絶対に怖いと思うし、打ってきたら痛いに決まってる。 それから僕はシートベルトをギュッと握って優しい音楽を静かに聞いていた。 そう言えば、お母さんが僕を公園に置いて帰った日も───── 「──…ユ……キ、ユキ?」 「…ぁ、ご、ごめんなさい…」 「どうかしたのか?もうスーパー着いたから、降りるけど、しんどいならここで待ってる?」 「ううん、しんどい、違う」 命にシートベルトを外してもらって車から降りる。僕はすぐに命に駆け寄って手をギュッって握った。 「どうした?何か怖いことあった?」 「…ううん」 お胸のところがちょっとだけキューってしたけど、それより僕はスーパーがとっても大きな所だって知って、びっくりして命と繋ぐ手の力が自然と強くなる。 お野菜があったり果物があったり。命はかごを持ってたくさん物を中に入れてる。その中には僕の苦手なお野菜もあって、お目目を逸らす。 「飯何食いたい?」 命が何を食べたいかって聞いてきて、たくさんたくさん考える。 そうしていると僕と同じくらいの大きさの子が、その子のお母さんと手を繋いで何かを話してる。 「今日はカレーよ」 「やったぁ!」 カレーってなんだろう。お名前を聞いたことはあるけど、作ってもらったことはないから、カレーを食べてみたい。 「カレー、食べたい、です」 「カレー?じゃあカレーにするか。」 命は優しい。僕の食べたいもの、何でも食べさせてくれる。 「ふふっ、命、好き」 「あ?そうか、ありがとな」 命が優しいお顔で笑うから、僕もニコって笑ってみる。 命は僕がニコってしても怒らない。お母さんは僕がそうしたら「気持ち悪い」って言って、お顔を叩くから、いつも笑っちゃダメってお母さんの前ではそんなお顔をしなかった。

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