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第20話

急いで体を洗うユキを横目に見る。 何も話さないでいるとだんだんと瞼が重たくなっていく。あー、やべえ。このまま寝ちまいそう。抵抗は一切しないまま夢の世界に片足を突っ込んだ。 「命…?寝んね?」 風呂のせいでユキの声が少し響いて聞こえてゆっくりと目を開ける。不安そうに眉尻を下げるユキはもう体は洗い終わったのか泡を体につけてはいなかった。 「違う」 「そうなの…?あのね、僕洗ったよ」 「…そうか、じゃあ俺と交代」 浴槽から出る俺と浴槽に入ってくユキ。今更だけどお前本当小さいな。 「…暑くなったら上がっていいから」 「うん」 って、言ったのにも関わらず結局ユキは俺が洗い終わりって風呂から出るまで上がることは無かった。 「暑いの…」 「当たり前だろ。逆上せてねえか?」 「んー…」 よくわからない返事をしてるユキの体を拭いてやって下着とトレーナーを渡す。俺も体を拭いてスウェットを着て、ユキも服を着たのを確認して脱衣場から出ると少しフワフワした足取りで俺を追いかけてくるユキ。 何だか危なっかしくてユキを抱っこして背中をポンポン撫でてやると肩に頬をあててボーっとしてる。 やっぱり逆上せたのだろう。キッチンに行ってコップに水を入れ、それをユキに渡すとゴクゴクと喉を鳴らして飲んでいた。 「命…僕、寝んねしたい」 「おう、でも髪乾かさねえとな」 「うん…」 ユキの首が左右前後に揺れる。相当眠たいんだろう。 「乾かしたら寝れるから、ここ座れ」 ドライヤーを片手に俺の足の間に座るように言うとヨテヨテっと四つ這いで近づいてきた。 「熱くねえ?大丈夫か?」 「んー…」 まともに返事を返せないほど眠いらしい。かくかく首を揺らすから乾かしにくいし… 「ユキ、もうちょっとだから頑張れよぉ」 「僕、起きてる…大丈夫…」 じゃあ首をかくかくさせるのやめてもらっていいですか。なんて言えるはずもなく。 やっとユキの髪を乾かせて自分の髪は半乾きのまま、ユキに歯磨きをさせてベッドに向かわせる。 「ねむねむ…」 「おう、寝ろ。」 「…命は?寝る、しないの?」 「俺はもうちょっとしたら寝るよ」 なんてったって今から洗濯物をしなきゃいけない、それから少し部屋を片付けてやっと寝れるんだ。 「…僕、一人、いや…」 「お前が寝るまでいてやるよ」 ユキをベッドに寝かせ、隣に俺も寝転んで擦り寄ってくるユキの背中を撫でる。寝息が聞こえてきたからソッとベッドを抜けて、洗濯機を回して、その間に部屋を少し片付けた。 「子供が一人増えたら、大変なんだな…」 組員達の面倒を見てくれている親父のすごさを改めて知った。

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