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第26話

適当な物しか作らなかったけど、二人はそれを食べて喜んでくれた。自分の為に飯を作るのは面倒でしないが人の為だと思うと面倒には思わない。 「お腹いっぱいですぅ、命さん料理うまーい!」 「僕もお腹いっぱい」 けふ、と息を漏らしたユキは俺を見て何か物足りないとでも言うような顔をしていて。何だ? 「命、約束、した」 「あ?約束?」 約束なんてしたか? そもそも約束するのはそんなに好きじゃない。俺はどうやら約束事を忘れやすい。それは例え相手がどんな奴でも。 「…お菓子、たくさん…」 そこまで言われて「ああ!」と思い出す。そういや菓子の袋はキッチンに置いたままだった。キッチンに行ってその袋を手にユキの前に立つ。 「ちゃんといい子に留守番出来た?」 「した、僕、頑張ったよ…?」 「じゃあ、これやる」 袋いっぱいの菓子をユキに渡すとキラキラと目を輝かせる。あ、その顔いいな。 すごく可愛い。 「命、ありがとう…!」 「ああ」 「ユキくん、よかったねぇ!」 嬉しそうにするユキを見て、俺まで嬉しくなった。 ユキは腹がいっぱいになって満足した様でソファーでスースー眠っている。そんなユキを見た鳥居は優しい顔をしてユキの頭を撫でていた。 「ユキくん可愛いぃ」 「頬っぺたぷにぷにだねぇ、可愛いなぁ」 「ええー!足小さい…今度靴も買いにいかないとなぁ」 ひたすら独り言を話す鳥居。それはあいつの寂しい時にする癖。 友達が出来ないからと悩んでいた時に、本人も知らない間についてしまった癖らしい。今もそれは治ることはなく、時々今みたいに独り言を話していることがある。 きっとユキが寝てしまって寂しくなってるんだろうな。だからと言って俺は何もしてやんねえけど。 「命さーん、今日泊まりたい」 「はっ!?」 「お願いですお願いですー!ユキくんともっと一緒にいたいのー!」 小さい子供みたいに駄々をこねだした鳥居。ここで拒否をしてもうるさくなるだけだと思い「わかった」と言えば「やったー!」とはしゃいで笑う。 昔から変わらず少し不安定なまま生きてる鳥居に無理矢理何かを強要したり、本人の嫌がることをするなんてことは俺には出来ない。

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