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第33話

ユキが寝たのを確認してからベッドを出た。ユキには嘘ついて悪いけどそうした方がすんなり寝てくれただろうし、仕方ない。 リビングに行くと鳥居がソファーの上で膝を抱えていた。…やっぱり。予感はしていたけど、ユキが寝てしまって寂しいと思っているんだろう。またブツブツと独り言を言っていて、そんな鳥居に近づきそっと肩を叩く。 「鳥居」 「命さん酷い、ユキくんとまだ話したかったのに」 完全にいじけモードな鳥居が面倒でついつい白けた目を向けてしまう。 「何ですかぁ!その目はぁ!」 「うるせえよ。お前ももう寝ろ。明日は仕事ねえのか?」 「無いですよぉ!!だから命さんお話ししてください!!」 「俺はお前に構ってるくらいならさっさとやる事をやりたい」 「そんなこと言う命さんにはこうしてやる!!」 突然動き出した鳥居が俺の背後に回り込み抱きついてくる。足を俺の腰に絡ませたかと思えば首には腕を絡ませ…本当、何がしたいの、お前。 「命さん構ってぇー!」 「部屋につれてってやるからさっさと寝ろ」 「ここまでしてるのにぃ!!」 「手離したら落ちるぞ」 鳥居の寝る部屋までそのままつれて行ってやりベッドに落とす。やっと諦めたのか、ただ拗ねているのか、布団を頭まで被り無言になった。 「明日またユキと遊んでやれ。ユキはお前のことが好きだから、お前が遊んでくれたらユキが喜ぶ」 「…命さんは?」 「あ?」 「ユキくんと俺が遊んでるの見て、楽しいですか…?」 何だその質問。とついつい笑いそうになるけれど、鳥居は真剣だ。楽しいかどうかはさて置き、鳥居とユキが楽しそうに遊んでいるところを見るのは、安心する。 俺に弟なんていないけれど、もし弟がいたらこんな感じなんだろうと、たまに鳥居を見て感じていた。 そして、新しく家族になったユキ。 その二人が笑顔でいる時は俺の気持ちも楽になる。 多分この感情は幸せに似ている。 「お前らが仲良いと、俺は安心するよ」 まあ、そんなこと絶対言わねえけど。 「なら、いいです。」 珍しく語尾を伸ばさなかった鳥居は布団をずらし顔を少しだけ見せて、それから嬉しそうに笑った。 鳥居の部屋を出て、やるべき事…片付けや洗濯物に取り掛かる。 結局全てを終わらせるのには時間がかかって、ベッドに入れたのは日付が変わった頃だった。 やっと寝れる…。と目を閉じようとしたタイミングで短いバイブ音が鳴り、イライラしながらも携帯を確認すれば早河からのメッセージが一件。 内容は俺が送ったデータ関係のことで、今度ある会議は1泊2日で行われるということと、その際俺はどうするか、ということだった。 どうする、っていうのは多分ユキのことで、1泊2日の間をユキ一人にするなんて怖くて出来ねえし、かといって連れていくことも無理。鳥居にユキを任せるのも…少し怖い。 俺だけ日帰りするしかないか。 「面倒臭ぇな…」 とりあえず"考える。"とメッセージを返しておいた。背中を丸めて眠るユキを引き寄せ、抱き締めて俺も目を閉じた。

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