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第34話

チュンチュン、と鳥が泣いている。 目を開けて目に写った天井を少しの間眺めてから、今何時だ。と枕元に置いていた携帯を手に取る。9時と表示されていて飛び起きた俺は、ベッドにユキが居ないことに気付いて慌てて寝室のドアノブを掴んだ。 その時。 「ユキくん~!すっごい上手だねぇ!」 「これ、命、誉めてくれる…?」 「うん!きっと褒めてくれるよー!もう少ししたら命さん起こしに行こうね!」 ────こりゃ、ベッドに戻るしかねえな。 どうやら二人は朝飯を作っているのか時々何かを焼く音や二人の焦った声や笑い声が聞こえてくる。 ベッドに入って布団を被り寝たフリを続けていると本当に眠たくなってしまって、また目を閉じることとなった。 「────命ぉ!起きて、」 ユサユサと体を揺らされて、ゆっくり目を覚ます。 「…おはよ」 「おはよう、あのね、僕…」 「ん…?」 モジモジと「言いたいけど、どうしよう。」みたいな動きをするユキの頭にポンっと手を乗せる。そうすれば「早く、リビング行くの」と俺の手を取り、繋いで、リビングに引っ張り出された。 「………………」 「あ~!命さんおはようございます~!」 「……おはよう、これ、お前ら二人で?」 「僕、頑張ったの」 並べられている朝食は豪華なもので驚く。そうだった、鳥居はちゃんと料理が出来るんたった。 そして料理の手伝いをして誉めてほしいのかうずうずしているユキが俺を下から見上げてくる。 「ありがとな、ユキ、鳥居」 「命さんが喜んでくれたぁー!」 「命、ありがと…言ってくれたの…!」 喜ぶ二人が「やったー!」とハイタッチする姿は可愛らしくて、クスクスと笑った。 「あのね、あのね…これね、僕がくるんしたの!」 「卵焼き?」 「うん!夕くんがね、上手って言ってくれたんだよ!」 席につくとユキがそう話し出して、そんなユキを鳥居は優しい顔で眺めている。 「僕ね、お料理出来たの!」 「そうだな。また今度卵焼き作ってもらおうかな」 「いいよ!」 まだまだ話したそうなユキだけれど、温かい飯が冷めてしまうのは申し訳ない。だから「手を合わせて」と言うとハッと思い出したのかバチンっと両手を合わせ「いただきます」と言って箸を掴む。 さっそく卵焼きを取って口に入れる。ふわふわしていて美味しい。ユキがジロジロ俺を見てくるから「美味しい」と口に出し、そうすればユキと鳥居が嬉しそうにキャッキャと笑っていた。 ご飯を食べ終わってから俺は一人でボーッとして、ユキと鳥居は楽しそうに遊んでいた。でもその時間もしばらくしたら鳥居が帰る事で終わってしまう。 「夕くん…帰るの…?」 「明日は仕事があるから準備しないといけないんだよねぇ」 鳥居の仕事が何かが気になる。準備をしないといけないということは結構なものなのだろうか。ユキがいる手前、そう言うことを聞くのはなんだか少し気か引ける。 「また、来る…?」 「うん!くるよー!また今度遊ぼうね!」 ユキの頭を撫でて、持ってきていた荷物をまとめ「お世話になりましたー!!」と家を出て行った。 昨日は鳥居だったが今日はユキ。 いじけるようにソファーで唇を尖らせるユキは鳥居がいなくなって寂しいらしい。 「ユキ」 「…夕くん…お仕事…帰っちゃったの…」 だんだんユキが涙目になってきて、慌ててユキを抱っこする。俺の肩に顔をグリグリ押し付けて「泣かない…!泣かないのぉ…!」と我慢している。 「偉い偉い」 そんなユキの背中を撫でながらソファーに座り長い息を吐いた。

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