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第43話

ついに会議の日がやって来てスーツを着る俺を「かっこいい」と言うユキは涙目。そんなユキを励ます鳥居に「早くしろ。」と言う早河。 早河は鳥居をここに送りに来て、俺を拾ってまた組に戻る、なんて面倒な事をわざわざしてくれている。 「──じゃあ、行ってくるな」 「ぅ…いって、らっしゃい…」 「ああ、いい子にしてろよ。鳥居頼むな」 「はぁーい」 ユキに手を振ってバタンとドアを閉める。ユキを拾ってからはほとんどずっと一緒にいたから、少し寂しい。 早河と車に乗り込んで組の方まで向かう。 「おい、そんな顔してるな」 「わかってるって。」 「今日は若も出席される」 「珍しいな、若も来るなんて」 浅羽組の若頭は鳥居より年下の17歳。後に頭になるのだからいい加減仕事を覚えなくてはならない、と今日は出席するらしい。仕事を覚えるて言ったって、昔から何かと見てきただろうに。 「だから、今日はうちの奴らも俺達だけじゃなくて結構な人数がいるぞ」 「へえ…」 何かあれば命をもってしても親父と若を守らなければならない。うちの組のが沢山居て困ることはない。 「気、張れよ」 「ああ」 ピリッとした緊張が走った。 組について、車を車庫にいれ親父に挨拶をするために厳つい門を潜り長い廊下を歩く。 廊下を歩いていると黒髪の男が前から歩いてきて───… 「あっれ?命じゃん!久しぶり!元気してたか!!」 「久しぶりです、若」 「もう!若じゃなくてさぁ!!今はハルでいいって!」 明るい声で俺に無茶な事をいうこの人が浅羽組の若頭、浅羽 晴臣(はるおみ)。どこから見たってただの高校生に見えるが、スイッチが入った途端とても冷たい人間になる。冷酷非道、その言葉は今のこの人に似合わないけれど、そのときにはぴったりだ。 「今日はよろしくな!」 「こちらこそお願いします。」 頭を下げる俺と早河。 そんな俺らの前を通っていく若には人の上に立つ。そんな人だと思わせるオーラがある。それは勿論親父の方がそうではあるけど、俺には無いし。 「…おい、早く行くぞ」 「ああ、悪い」 早河は俺の家に来る時より何倍も厳しい顔をしている。その顔見たらユキが泣きそうだな。と思いながら、早河にとって気を張るという事はもう癖がついていて、直らないものなんだと感じた。 親父の部屋の前に行くとちょうど親父が外に出てきていて部屋の前で頭を下げる。 いつもはにこやかな親父も今日はそうではなかった。 「集めろ、そろそろ行くぞ」 「はい」 早河が返事をして傍にいた組員達に全員を集めるように声をかけ、俺は幹部立ちがいるであろう部屋に向かう。 そこはいつもの事ながらとてもうるさい。部屋の前に立つと中に入るのが嫌になる。躊躇っていると中から言葉を投げられた。 「そこにいるの、誰ー?」 「入ってこいよ」 「誰だよー!まさか親父じゃないでしょ?若でもないし…早河とか?」 「早河なら俺らやばくね?仕事何もしてねえぞ」 ケラケラ笑ってる中にいる3人。 溜息を吐いてゆっくり襖を開けようとしたけれど、その前に中から襖が開いた。 目に映るのは茶髪の男。 「もう、誰だ、よ…」 「……よぉ、八田(やた)」 「黒沼だった!」 八田がそう叫ぶと中にいた奴等がこっちを見て目を見開いている。何だその間抜け面。 「あれー!みっちゃん!久しぶり!今日の会議参加するの?」 「その呼び方やめろっつってるだろ赤石(あかいし)」 「んふ、だって命でしょ?みっちゃんの方が呼びやすいし」 少しチャラチャラした金髪の男、赤石。 「えー、命が参加するなら俺達要らなくねぇか!」 「……………」 「…う、嘘でーす。俺達は若を守りまーす!」 俺に敬礼をする中尾(なかお)。オレンジっぽい髪を揺らして笑いながら俺から少し距離をとっていく。 「そろそろ出るぞ。集まれ」 「了解!」 「すぐ行く」 「行きます!」 そうして幹部連中を集めた俺は親父や早河と組員が集まっているであろう大広間に足を運んだ。

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