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第46話

嫌なこと、考えたらお母さんを思い出す。 「あのね、バカって言われるの、嫌」 お母さんはいつも僕にバカって言って、フンってお顔を見せてくれない。 「頬っぺ叩かれるの、嫌…」 バチンってお顔叩かれて、痛くて泣いちゃった時もある。 「お風呂、嫌…、お家から出してもらえないのも、独りぼっちも嫌……ご飯くれないのも…」 僕、嫌なこと沢山ある。 嫌々ばっかりで夕くんも僕のこと嫌いになっちゃうかな。 「僕、嫌々ばっかり…悪い子…」 夕くんはお料理をやめて僕の事をギュって抱きしめてくれた。背中をポンポン撫でくれて少しお胸が苦しくなくなる。 「ユキくんは悪い子じゃないよ。とってもいい子」 「でも、僕…」 「ユキくんはいい子だよ。…ねえ、お風呂が嫌なのは何でか教えてくれないかな…?」 「お、風呂は…お洋服着たまま、お水たくさんかけられて……そのまま、お風呂から出してもらえなかったの……独りぼっちで…出してって…言っても笑われて…フンってされて…それでしんどく、なって…でも…」 「ごめん、話すの辛いよね…」 「夕くんだから、お話、大丈夫なの」 僕は強がってそう言ったけど体が震えちゃう。 寒くてこのまま死んじゃうんじゃないかって思った時のお話だから思い出したらすごい怖くて怖くて。 「ごめんね、話してくれてありがとう。オムライスすぐに作るからね?」 「大丈夫、大丈夫」 お胸をトントンって叩いて大丈夫って思いながら夕くんのお料理するところをじっと見ていた。 「ユキくん!これ、ケチャップ自分でかける?」 「うん!」 トロトロ卵のオムライスと一緒に、夕くんがケチャップをくれる。 「なみなみ、書くの」 「うん!好きなの書いていいよ」 「夕くんは…?」 「俺のもユキくんにしてもらおうかなー!」 「するー!」 僕のオムライスになみなみを書いて、その後に夕くんのオムライスにもなみなみを書く。 上手に出来た!って夕くんに見せたら頭を撫で撫でしてくれて、嬉しくてフフって笑っちゃう。 「上手だねぇ」 「僕ね、僕、お絵かき上手って命が言ってくれたの!」 「そうなの?じゃあ後で俺ともお絵かきしよう?」 「うん!」 夕くんと椅子に座っていただきますをする。 トロトロ卵にスプーンをさして、ケチャップご飯と一緒にお口の中に入れた。

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