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第51話
しばらくしてやっと目を覚ました鳥居が寝転んだまま緩んだ顔で俺に手を伸ばす。その手を掴んでやると思いきり引っ張られて床に膝をついた。
「んー…ふふ…」
「寝惚けてないで顔洗いに行け」
「命さぁん」
「早くしろ、バカ」
腰に腕を絡められて、さすがに気持ち悪くて頭を叩いた。そしたらダラりと動き出し俺の隣に立っていたユキを抱き締めている。
「夕くん、痛いの」
「んー、ごめんねぇ」
ユキを離してフラフラと洗面所に向かった鳥居。そしてなぜかユキは顔をムッと歪めている。「どうした?」と聞けば俺に抱きついてきた。
「何?」
「夕くん…命にギューした、僕もする」
どうやら鳥居が俺の腰に絡んできたのが気に食わなかったようだ。
そんなことで何で怒っているんだろう。
結局ユキの気がすむまでそのままにして、ユキが離れてから鳥居の寝ていた布団を片して、はぁ。と長い息を吐いた。
「命、しんどい…?」
「ちょっと疲れただけ」
「お熱、違う?」
「違うよ」
椅子に座ると当たり前のように俺の膝に乗ってきたユキ。そんなユキの頭を撫でながら目を閉じた。
***
「じゃ、お邪魔しましたー!」
「ありがとな」
「ありがとう、ございました…」
鳥居が帰っていってユキと2人になって、少し休憩してから公園に行くことに。
歩いて数分のそこはブランコや滑り台、鉄棒があった気がする。
手を繋いで楽しみでふふっと笑いながら歩くユキは公園に恐怖心は無いのだろうか。
俺がユキと出会ったのは、今から行く所とは別の所だけれど、公園だから。
「公園怖くないか?」
「怖くない、よ」
「そっか。」
俺と繋いでいる手の力が強くなった。出会った時のことを思い出して傷付いてるのだろうか。
「ほら、着いたぞ」
公園の中に足を踏み入れる。こんな所、いつから来てなかったっけ。タイミングよく今はこの公園に俺たち2人だけ。
繋いでいた手を離したユキは目を輝かせて滑り台の方に向かって走り出した。のに
あ、転げた。
ユキは滑り台の少し手前でバタッと転けてしまった。
「大丈夫か?」
「…いた…ぃ…痛くない……痛くない…」
泣かないように我慢しているらしい。ちゃんと転ける時に手から地面についたらしく、血が出るような怪我はどこにもない。
「あんまり走ったらまた転けるから気を付けろよ」
「はい」
唇を尖らせ少し拗ねているユキの背中を遊んでこい、と気持ちを込めて軽く押す。そしたら今度は早足で滑り台に行き、階段を上っては滑り、上っては滑りと、滑り台が好きなのか何度もそれを繰り返していた。
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