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第52話
「命、命っ」
「おう」
公園のベンチに座ってユキを見ているとブランコに乗りたいみたいで俺を呼ぶ。俺に押せってことらしい。
「ちゃんと掴まっとけよ」
「うん!」
ユキがしっかり掴まってるのを確認してブランコを揺らす。ある程度揺れてきたらユキの背中を軽く押して、を繰り返していた。
「高いー!」
いつもより高いのが嬉しいのかキャッキャと笑っていて楽しそうでよかった。
「手離しちゃダメだぞ」
「うん」
ブランコはそれからずいぶん長い間揺れていた。
***
遊び疲れて俺の背中で眠るユキ。
帰り道を歩いていてボーッと思う。あんなにはしゃいでいるユキを初めて見た。外で遊ぶっていうことは子供には大切なことなんだなと感じる。
ズルっとユキが落ちてきて、背負い直して。この重さが可愛いなぁなんて思って、いつの間にか笑う自分がいる。そこで気付いた。俺、ユキのこと可愛いって思いすぎじゃねえか?
いや待て。確かにユキは可愛い。そして俺はユキのことを好いている。俺の思う可愛さは勿論、小さいからって言うのもあるけど不意に見せる無邪気な顔とか、そういうものであって………?
「なんか…やばくねえか…?」
うまく整理できない頭、ズリズリと背中を落ちてくるユキ。頭を悩ませながら帰路を急ぎ、少しすればマンションに着いた。
「…ただいま、っと」
ユキを背中に背負ったまま靴を脱がせて俺も靴を脱ぎリビングに行く。ユキをソファーに寝かせて毛布をかけ、俺は何しよっかなぁと着ていた上着を脱いだ。
「疲れた」
子供と遊ぶのには体力がいると前から思いはしていたが、いざ遊んでみると本当にそうだなと改めて思った。体が怠い。
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