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第53話
ユキはまだ起きない。
俺は飯を作って読書をしてと穏やかな時間を過ごす。最近はこんな平和な生活を送ってばかり。本当柔らかくなっちまってる。こんなのダメだとわかっているのにやっぱりこういう生活は好きなんだよな。
「あ、そういや…」
あいつに連絡いれないと。
ユキのことを理解するためにはあいつの手伝いがいる。俺は人の気持ちをわかってやるなんてことを今までしようとしてなかってから、その仕方がわからない。だからこの助けを借りようと思うけど、それも正解なのかがわからない。
明日行く。とメッセージを送る。すぐに了承の返事が帰ってきて助かった。時刻は正午を回った頃。
「ん…ぅ…」
「ユキ、起きた?」
「ん…起き、るの…」
「そろそろご飯食べないとな」
簡単に作った飯を食ってから、お昼寝をすることなくユキはすぐにお絵描きを始める。
そんなユキの様子を見ているだけでも穏やかな気持ちになるんだよな。というか…俺っていつも休日は何してたっけ?寝るか食うかしかしてなかった様な気がする。たまに読書、それからたまに……ああ、女だ。
ユキがいない時はいつも、どこかに欲の乾きがあった。でもユキがいるようになってから何もしようとも思わないし、思ったとしてもなかなか出来ないし。
本当、どうしちまったんだよ………頭を抱えたくなった。
その日の夜。
ユキに明日のことを伝えていなかったことを思い出した。
「ユキ、朝も言ったけど明日出掛けるぞ」
「どこに、行くの?」
ベッドに入り話をする。
「言ったろ?お前のことをわかってくれる人のところ。」
「あ…優しい、人?」
「優しいよ、ちょっと変だけど」
あれはちょっとじゃないのかもしれないけれど。浅羽組がいつも世話になってる奴で信用も出来るし、何より可愛い奴やかっこいい奴が大好きだからユキのこともきっと気に入ってくれると思う。
「命もいる?」
「いる、俺もそいつに用事があるから」
「…お名前、何て言うの…?」
「んー?あいつの名前はトラ。」
「トラ?とらさん?ガオー…?」
「いや、俺達がそう呼んでるの」
ある意味ガオーな奴だけど。
ユキの顔が少し強張ったから大丈夫だってユキを抱き締めた。
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