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第57話

昼飯を食って、午前中にたくさん話をして疲れたらしいユキは、テレビを見ながらいつの間にか眠っていた。毛布を持ってきてユキの隣に寝転ぶ。ユキの体温は高くて温かい。抱き締めていると落ち着く。俺も少しだけ寝よう、今日はもう動きたくない。 そうして目を閉じた俺は、震えた携帯に気付かなかった。 「命、起きて…命…!」 ユキに何度も名前を呼ばれて目を覚ました。目の前に携帯を突きつけられて何だよと眉を寄せる。 「…ブーブー…してた」 「え…」 ユキから携帯をもらい画面を見るとえげつない量のメッセージ。それは全部赤石と中尾と八田からだった。 「…着いた…?」 最新のメールを開けると"着いた"とだけ書いてあって、その2個前のメールを確認すると"今から行く"と書いてある。 「何でだよっ!!」 慌てて起き上がって、そしたらユキがビックリして俺のいつもより大きな声に怯え小さくなった。 「…あ、悪い…」 「僕、悪いこと、した…?」 「してないしてない、ごめん、ほらこっちおいで」 怯えて俺から離れるユキに両腕を広げて座り込み「おいで」と言ってみるけど、そのタイミングでピンポーンと音が鳴る。 「…お客…さん…」 「あー!くそ…」 ユキを置いて玄関まで走ってドアを開ける。 「やっほー!」 「帰れ」 手を挙げてる八田達にそれだけ告げてドアを閉めようとすると隙間に足を差し込んで閉められないようにされる。 こいつら…ヤクザみたいなことしやがって…! 「黒沼ぁ、さすがにそれは酷いだろぉ」 「お前らヤクザかよ!」 「そうだよ!テメェもだろうが!」 「うっせえ!!帰れ!!」 「えっ、ちょ!!痛い痛い痛い!!!」 グググっとドアを引く。でも相手は3人、俺が勝てるはずなんて無く。 「お邪魔しまーす!」 数分後には玄関で疲れて荒い呼吸をする俺と、うるさいくらい大きな声で話す3人がいた。 玄関で少し休んでいるとリビングから大声が聞こえてきた。それから俺を呼ぶ声と、ユキの泣き声。慌ててリビングに走っていけばユキがバカ共に囲まれていた。 「みっちゃん!!この子泣いちゃったよ!!」 「てか誰こいつ。お前の子供?」 「泣くな!男だろ!」 とりあえず号泣するユキを抱っこする。ワーワーと騒ぐ3人にイライラとして 「お前ら静かにしろ!!」 そう怒鳴ればすぐに大人しくなった。 「ユキ、ごめんなビックリしたな」 「…んっ…んっ…」 俺の首に顔を埋めて泣くユキ、あいつら後で一発ずつ殴ってやる。 「ほら、こいつら別に怖くねえから」 「……でも、でもっ、命ぉ…」 「よしよし」 ユキを抱いたまま椅子に座り背中を撫でる。あーあ。こんなに震えて…。 「お前らは何で来たんだよ」 「だってみっちゃん最近冷たいんだもん」 赤石の言葉にうんうん頷く2人。それに溜息を吐いて、やっと泣き止んだユキを膝に乗せたまま、ユキの紹介をした。 「こいつはユキ。少し前から俺と一緒に住んでる」 「あー!もしかして!鳥居の言ってた子!」 「確かにあいつユキくんって言ってたもんな!」 へぇ、とユキをじろじろ見るから、ユキはまた少し怖くなったようで俺のことを見上げてくる。 「ユキ、左が八田、真ん中が赤石、右が中尾だ」 「やた…さん、あかいしさん、なかおさん…」 確認したユキは「僕…ユキ…」と小さい声ながらも自分で名前を言っていた。赤石はそんなユキのことを「可愛いねぇ」と言って頭を撫でる。 「で?ここに来た本当の理由は?」 俺がそういうとギクッという顔をした3人。端から俺が冷たいなんて理由で家に押し掛けてくるような奴等じゃないことは知っている。 大方仕事のことだと思うが、もしもそうなら面倒だな…と視線を床に落とした。

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