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第62話

いつもより早めに目を覚ました。こっそりベッドを抜けてキッチンに行き、袖を捲り冷蔵庫を前に仁王立ちをする。 とりあえず弁当には定番の卵焼きだろ。あと子供が好きそうなのって言えばタコさんウインナーとか…いやここは少しレベルアップしてカニさんウインナーにしてやろう。やっぱり野菜もいるからトマトを入れて……あ、それに子供が好きと言えば……! ユキが起きるまでまだ時間はある。ちゃんとした弁当をユキに持たせてやらないと。と気合いをいれて弁当作りに励んだ。 *** 弁当を作り終わってコーヒーを飲みながらテレビを見ていた。今日の天気は晴れ、けれど気温は低い。 ゆっくりと過ごし、ユキをいつ起こそうか悩んでいると寝室のドアが開いた気がしてそっちに目を向ける。そこにはユキの姿が。 「お、ユキ、おはよう」 「おはよう…ございます…」 さっそくユキに弁当を渡そう。すごくワクワクする。ユキがどんな反応するのかが楽しみ。 ユキの前に青いナプキンで包んだ弁当を出した。そうすれば首を傾げるから…もしかして、お前これが何かわかんねえの? 「これ…なあに…?」 「弁当」 「べん、とう…?」 「お前の昼ご飯。これ持ってけ」 ユキの手にそれが渡った瞬間ユキは泣き出した。 何だ何だ、どうしたんだ。 「何で泣くんだよ」 「おべん、と…初めて…僕…、僕…」 お弁当を思いきりユキが抱き締める。 「おいおい、中がぐちゃぐちゃになるだろ。」と、そう言うと慌てて体から弁当を離したユキはそのまま弁当をリュックににいれて、それから俺に飛び付いてきた。 「うわっ」 「お弁当…ありがと…、好き、命…優しい」 「おう、俺もユキが好きだ」 ユキのことを抱っこしてそのまま頬っぺにキスをした。それは無意識で、ユキが可愛いなと思ってしまったから。そしたらユキも俺の頬にキスをして来て、そのくせに顔を赤くして恥ずかしがっていた。

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