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第67話 ユキside

「ユキくん、そろそろお腹空かない?」 「僕、お腹…ペコペコ…」 トラさんのところでお絵描きをしたり、トラさんとお話ししてるともうこんな時間。お腹はペコペコでグゥって鳴った。 「ご飯はある?」 「あのね、命が…僕に…お弁当、作ってくれたの…!」 「命が?」 「僕、それ食べるの」 「わかったわ!私もお弁当かあるから…ユキくん、一緒に食べましょ?」 「うん!」 机にバッグから出したお弁当を置いて、青いハンカチを広げる。中からはお箸と四角い箱。 この中にご飯があるんだ…! 勢いよくそれを開けるとキラキラ美味しそうな白いご飯と卵焼きと、タコさん…じゃない、これは何だろう…?あ!もしかしてカニさん!これ、カニさんウインナーだ!それと赤くて丸い小さなトマトと…… 「トラさん…これ、なあに?」 「それはエビフライね!」 「エビフライ!?」 大変だ!エビフライが入ってる!エビフライっていう名前は知ってるけど、こんなのなんだ! 「お茶用意するわね」 「トラさん……食べても、いい?」 「いいわよ」 「やったあ…いただきます!!」 エビフライをとって一口だけ食べてみる。 「おいしい…!」 「命こんなの作ってくれるのね、何これ、タコじゃないの?」 「これ、カニさん…」 「へえ、どうせレベルアップとか思ったんでしょうねぇ」 れべる、あっぷ? わからないけど、エビフライすごくおいしいの!頬っぺが落ちてきそう… 「命に、ありがとう…するの」 「命もユキくんがそう言ってくれたらすごく喜ぶんじゃないかしらねぇ」 そのあとゆっくり美味しいお弁当を食べてお弁当箱は綺麗に空っぽになった。 *** 命まだかなぁ、ってさっきから時計を見てばっかりの僕。なのに全然時間は進んでくれなくてがっかりした。 「ユキくん暇になっちゃった?」 「えっとぉ…少し、だけ…」 「じゃあ、私のお手伝いしてくれないかしら?」 「お手伝い…!僕、お手伝い、出来るの…!」 「そう?じゃあこれをね…」 お手伝いはトラさんから渡された小さなお薬を左に3つ行ったところの部屋にいるタクミっていうお兄さんに渡せばいいんだって! お薬を手に持って、お部屋を出て左に3つ目ドアの前に立った。こっそりドアを開けて中を見ると怖そうなお兄さんたちがいっぱいだ!! 「ど、どうしよう…」 タクミさんはどれなんだろう…どれがタクミさん?僕わかんない。 急いでトラさんのお部屋に帰ってトラさんにタクミさんがわからないって言ったら一緒について来てくれた。 でもこれじゃあお手伝い失敗だ。 さっき来たお部屋のドアをトラさんは勢いよく開ける。中にいたお兄さんたちがすぐにこっちを見て僕は恥ずかしい… 「タクミ、手挙げて」 トラさんがそう言うとツンツン髪の男の人が手を挙げた。そしたらトラさんが僕の背中をポンっと押す。僕はその人のところまで歩いてお薬を出した。 「あのぉ…お薬…」 「ありがとね」 笑って僕にお礼を言ってくれたタクミさん。でもやっぱり恥ずかしくてお薬を渡してからすぐにトラさんの後ろに隠れた。 「トラぁ、その子誰?」 「まさかトラの子供?」 「でも似てねえじゃん」 「てか女の子?男の子?」 お兄さんたちがいっぱい僕を見てくる。ちょっとだけ、怖い。 「トラさん…」 「大丈夫、こいつらは怖くないわよ」 「でも…」 「ふふっ」 トラさんはお兄さんたちを無視して僕を抱っこしてお部屋を出て行く。わっ、僕、トラさんに抱っこされてる…! 恥ずかしいけど、トラさんは温かくて、だからそのままがよくて、トラさんのお胸に頰っぺをくっつけた。

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