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第69話 命side

仕事が終わって組に帰ってから、カラスに言われたことを考えていると結構な時間が過ぎていることに気付き、ユキを迎えに行って帰ることにした。 「帰る」 「みっちゃん帰っちゃうの?」 「おう、じゃあな」 やることを終え帰ってきた赤石が俺の腰に絡んでこようとするのを避けて組を出て行く。 「命さん帰るんですか!」 「ああ」 「お疲れさまです!車回してきます!」 車を門の前まで出してきてくれた組員に礼を言って車に乗る。 早く迎えに行かねえと、急いで車を走らせてトラの病院に向かう。 着いた建物の中はいつもより賑やかでトラやユキ以外に人がいることがわかった。 「ユキ」 トラの部屋を覗いてユキの名前を呼ぶ。途端、体に軽い衝撃。ユキが俺の腰辺りに腕を回して抱きついてきた。 「ただいま」 「おかえりなさい…!」 ユキの泣きそうになっている顔を見てから頭を撫でて、俺達を見てたトラが声をかけてくる。 「お疲れ様」 「ああ、トラも。ユキのことありがとう」 「ふふ、いいわよ。ユキくんね、お手伝いもしてくれて、本当いい子だったわ」 そう言って微笑んだトラ。ユキを見下ろすと、ユキは笑顔で俺を見ている。 「お手伝いしたんだ?」 「うん、あのね、タクミくんに、どうぞってしたの!」 「へえ、凄いじゃん」 ユキをそのまま抱っこしてユキの持ってきていたリュックサックを手に取る。 「帰る準備しような」 「お家、帰る…ふふっ」 ユキを下ろせば机の上に広げられてたお絵描きセットをリュックに丁寧にいれ始める。 「何もなかった?」 「ええ。本当にいい子にしてたわよ」 「そっか。ありがとうな」 「出来たの!」と少し大きいリュックを背負い俺に手を振るユキに笑い返す。 「今日から仕事復帰なんでしょ?これからあんたの仕事の時間はユキくんを預かってあげるわ」 「え、本当に…?」 「ええ。なんせ可愛いもの。それに他に預ける人なんていないでしょ。責任もって私が見てあげる。」 「…ありがとう、助かるよ」 ユキがこっちに来て俺に帰ろうと手を差し出す。その手を掴んでトラに最後に礼を言って建物を出ようと廊下を歩いた。 「あっ!」 途中でユキが思い出したかのように声をあげてそこに立ち止まる。 「どうした?忘れ物?」 「ううん、えっと…命」 「何?」 ユキがモジモジするから、もしかしてトイレか?とユキと同じ目線になるようにしゃがみ、目を合わせる。 「トイレ?」 「違うの…あのね…?」 「うん」 相槌をうつと、ユキはゆっくり口を開ける。 「あのね、お仕事、大変なのに…お迎え来てくれて、ありがとう、ございます」 そう言ってふんわり笑うから、あまりにも可愛くて思わず強い力で抱きしめる。 「そんなの、当たり前だろ」 そのままユキを抱っこして、廊下を歩く。 「あとね、お家、帰ったらね、僕、命と…お話…するの」 「じゃあ早く帰らねえとなぁ。」 建物を出て車に乗り込んだ。

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