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第70話

マンションに着いて手を繋ぎながらエレベーターに乗る。ユキはずっとふふっと笑っていて何やら嬉しそう。 エレベーターを降りて家の前に立ち、鍵穴に鍵を差し込んで鍵を開ける。そしてドアを開けた瞬間ユキが慌ただしく中に入って靴を脱いで、俺はまだ靴を脱いでないのに腕を引っ張ってくるから待て待て、と落ち着かせる。 「何?どうした?」 「僕、嬉しい…」 「何が?」 「帰って、これたぁ」 ユキの周りにだけ花畑が見えた気がする。それくらいの笑顔を俺に向けてきて俺も思わず笑ってしまった。 「命、早く靴…脱ぎ脱ぎして」 「はいはい」 靴を脱いで揃えてユキと手を繋いだままリビングへ。途端ユキは泣き出して、さっきまで笑ってたくせに何だよ、と眉を寄せる。 「お家…ただいまぁ…」 帰ってこれたことで安心して思わず泣いているらしい。そこまで?…なんて思ったけれど、こいつには俺の知らない過去がある。 「ユキ、おかえり」 床にしゃがみこんで泣くユキの隣に座ってユキの頭をくしゃっと撫でた。 ユキが落ち着いた頃には夕方の5時は過ぎていた。飯作らないとなぁとキッチンに行こうとしたらユキが俺の服の裾をチョンチョンと引っ張ってくる。 「何?」 「…あの…お弁当…」 「あ、そうだ。どうだった?今日の弁当。俺久しぶりに頑張ったんだけど」 「美味しかったぁ…エビフライ…初めて食べたぁ…」 腰に腕を絡ませて俺の腹にグリグリと顔を押し付けてくる。「そうかそうかぁ」と言いながらユキを抱っこし額をコツっと合わせた。 至近距離でユキを見てるとそれが恥ずかしくなったのかだんだんと顔を赤らめて目線を逸らす。 その姿が可愛くて、堪らず俺は 「ユキぃ、ちゅーしよっか」 と頭で考えることなく、言葉を発する。 「……ちゅー、する」 そう言ったユキの柔らかい唇をツツーっと舌で舐めてから唇を押し当てた。 そこで止まればいいのに、バカな俺はユキの唇の隙間に舌を差し込んでそのまま口の中にまでを犯す。ユキは驚いて顔を背けようとするけど、俺がユキの後頭部を押さえているから離れることは出来ないし、させやしない。 「…んゃぁ……みこ……ふぅっ…ん」 ユキの舌をとって絡ませて、軽く吸い、甘噛みをする。ユキは体を震わせて、薄く目を開けたかと思えばトロンとさせる。 ユキの顎にどちらのかもわからない唾液が垂れて、それを舐めて顔を離す。 改めてユキをみれば目に涙を溜めて顔を赤くして、俺は何をしてるんだとこの時にやっと気付く。 「ユキ悪い!嫌だった?苦しかった?」 「僕…おちんちんがぁ…」 そう言えば俺の腹辺りにチョンっと少しだけ硬い感触。どうやらユキは今のキスで勃っちまったらしい。 「悪い」 「おちんちん、ムズムズ……んっ、んっ…」 ユキの目に溜めていた涙が溢れて零れ出した。慌ててそれを拭ってユキに「何が嫌?」と聞けば「おちんちん、ムズムズ…やだぁ…」と俺の肩に顔を埋める。 ムズムズが嫌だって言うけど、それを治す術を果たしてユキは知っているのだろうか。

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