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第72話
飯も終わってそろそろ風呂の時間。服を脱いで風呂場に入ってシャワーのコックを回す。お湯が出てからユキの体にシャーと浴びせ、俺も浴びてから一度湯船に浸かった。
「そうだ。おもちゃ、明日買ってくるな」
「おもちゃ…?お風呂の…?」
「そう、どういうのがいい?お絵描きよくしてるだろ、風呂の中でお絵描き出来るようなのがいいか?」
確かそんなのがあった気がするんだが。
「…僕、僕…アヒルさんの、プカプカ…」
「アヒル?…ああ、この前テレビで見たやつか」
何かの番組でアヒルのおもちゃを泳がせてるシーンがあった。そう言えば「あれ何?」って結構食いついてたっけ。
「アヒルさん、プカプカするの」
「それでいいのか?」
「うん」
じゃあそれを買いにいこう。…ってか一緒に行って選ばせてやった方がいいんじゃないか?他にもたくさんあるし、風呂だけじゃなくても家にはおもちゃなんて無いから。
「一緒に買いにいくか?」
「いいの…?」
「ああ。一緒に行こう」
嬉しそうに笑ったユキがユラユラ揺れる。それと同時にお湯もユラユラ揺れた。
風呂から上がった俺らは服を着て髪も乾かさずにソファーに座った。この前、漏らしてしまったユキはその時のことを思い出して悲しくなるからとあれ以来あの服は着ようとせずに俺のトレーナーを1枚着て、足を惜しげも無く出している。
「髪の毛…乾かす、しない?」
「するけど、もうちょっとしてから」
「うん」
いそいそと俺の膝の上に向かい合わせに乗ってきたユキは俺の肩に乗っていたタオルを俺の髪にかけてクシャクシャしてくる。
「乾かしてくれてんの?」
「ポタポタ……お水…」
それから黙って目を閉じていたら俺が寝たと思ったのかぐちゃぐちゃになった髪を整えながらユキが近づいてくる気配。
「命、寝んね…」
そして頬に柔らかい感触、次に唇に……
そこで目を開けるとユキは驚いたようでピシッと固まった。あまりにも近い距離、あと1センチでまたキスが出来る。
「…起っき…してたの…?」
「今、起きた。…何でキスしたの」
「…きす…ちゅー……僕、命好き」
とんと軽くユキが俺の胸に寄りかかってくる、可愛いなぁと思いながら無意識にユキの首筋にチュッと吸い付いた。
「…んっ…ん!…いた…」
「…あっ…悪い……」
何でこんな子供相手にキスマークなんてつけちまったんだろう。そう思うのに止まらない。
赤黒くなったそこを指で撫でるとビクッと震えたユキ。俺を不安そうに見上げるユキの唇に軽く噛みついた。
「…ん…んっ」
声を小さく漏らすユキの後頭部を押さえて俺の思うがままに舌を挿入した。上顎を舌でなぞれば鼻から抜けるような声を出し、俺が舌を絡めようとするとユキの方から舌を伸ばして俺の舌先をちょんちょんとつつく。しばらく舌を絡ませてからゆっくりと離れた。
「ユキ、終わり」
「んん…」
頼りなく繋がる銀色の糸。口端から唾液が零れいてそれを舐めとればまたビクッと震えたユキ。
「…ちゅー…僕、変なお声出ちゃう……」
「変じゃねえよ」
ユキの頬に何度か唇を落として、そうすればなんだか安心した。
「命、…ブルブル……怖い…?」
「大丈夫。でももうちょっとこのままでいさせてくれ」
ユキを抱きしめてもっと安心を得ようとしてる。最近はよく思い出す、自分が親から捨てられたときのこと。それはユキと出会ってからで、もしユキが離れていったらどうしようっていう恐怖からだと思う。
「好きだ」
「僕も……命…好き」
ユキはそんな俺を優しく抱きしめてくれた。
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