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第76話
ユキはそのままトラの腕の中で眠った。それがとてつもなくムカついて、煙草を1本取り出し火をつける。
「あんた、わかりやすいわねぇ」
「あ…?」
「今イライラしてるんでしょう?ユキくんが私のところで寝てるから。…それ嫉妬っていうのよ」
「うるせえ」
確かにこれは嫉妬だと思う。何でトラにはユキを泣き止ませることが出来て、更にはその腕の中で眠っているんだ、と。
「…ムカつく、」
「ブッ!ハッハッ!!」
呟けばトラが壮大に笑いだす。しかも俺を指さして。
馬鹿にしてんだろ、と怒鳴りたくなるけれど、ユキが眠っているから我慢。
「バカにした訳じゃないわよぉ」
「うるせえよ。ユキ、ベッドで寝かせてやってくれ」
「はいはーい」
ユキを抱っこし寝室に連れて行ったトラの背中を見てから、フィルターギリギリになったタバコを灰皿に押し付けた。
トラはその後、「明日も早いから」と言って帰って行った。そんな中来てくれたトラには感謝だが、でもやっぱりムカつく。
ユキの寝ている隣で寝る気にはなれずに、風呂に入ってソファーに寝転んだ。
いつの間にか眠りに落ちる。
そして体を揺すられてる感覚に目を覚ました。
「ん…」
「みこと、みこと…」
「…何だよ」
電気は点けたままだったから光が目に刺さって痛い。
「今何時…?」
「…時計、短い針3にあるの…」
「……3時かよぉ」
そのままユキの腕を引き俺の腕の中に閉じ込める。もぞもぞと動くユキに何だよと聞くとベッド…と言うから仕方なく起きて寝室にいく。
「まだ寝ろ」
「うん…」
しばらくして俺の腕を枕にユキは眠った。
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