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第78話

朝から風呂に入ってスッキリした。 俺は今日は一日何をしようかと考えながら、一緒に風呂から上がったアヒルと絵本を読んで笑っているユキを眺めた。 絵本を読み終わるとお絵描きを始める。アヒルを描いていて楽しそうだ。 その様子をソファーに寝転びながら見ていると睡魔に襲われて目を閉じる。 「だめっ!」 「っ!何!」 ユキの大きな声に驚いて目を開けるとユキが目の前にいて、俺をじっと見る。 「寝んね、だめっ」 「…ごめん」 体を起こして、今度こそ眠らないようにと睡魔と戦い、ユキが「アヒルさん、描けた!」と俺に見せてくる姿を目に映す頃には、昼になっていて、慌ててご飯を作りユキに出す。 「いただきます!」 「どうぞ」 ユキが食べている間、珈琲を飲んで過ごす。 今日はこのまま、ユキが落ち着いて1日を過ごせるように、いつも以上に気を使って、ユキのことを最優先に考えた。 飯を食い終わったユキは、「ちょっとだけ、お昼寝、するの」と俺の手を引っ張ってソファーに移動する。一緒に寝てほしいのかソファーにゴロンと横になったユキが「寝ないの…?」と不安そうに見上げてくる。 「ユキが寝たら、俺も寝るよ。でも昼寝だから30分くらいで起こすぞ」 「うん」 「よし。じゃあほら、目閉じて」 ユキの腹をポンポンと撫でる。 次第に目を閉じて、眠りに落ちたユキには寝室から持ってきた毛布を掛けてやった。 やっぱりユキはいつもより少しだけ違う。 俺から離れようとしないし、俺と違うことをするのを嫌がる。 俺はユキの寝顔を眺めているだけで、眠ろうとは思わない。もし俺の眠っている途中にユキが魘されでもしたらと考えると、それが出来ない。 まるで俺の世界の中心がユキになったよう。 自分でそう思ったのがやけにしっくりきた。 多分もう間違いなく、俺はユキを中心に生きている。 ユキを起こすまでの30分間、そのことばかりを考えて過ごした。 ユキを起こすと不機嫌で、まだまだ寝足りないんだなと思わず苦笑を零す。俺の膝の上に乗り、胸にぴったりと頬をつけたまま動かない。 「ユキ」 「…なあに…?」 「まだ眠たい?もうちょっとだけ寝る?」 「…やだ」 ゆっくり顔を上げて、視線を合わせる。 ゆらゆらと揺れるユキの大きな瞳を見て、ユキは何かずっと考えていることがあって、けれどそれを口に出していいのかどうかを悩んでるのではないかと思い、「どうした」と優しく聞いてみる。 「…あ、の」 「うん。なあに」 頬に触れてスルリと撫でると気持ちよさそうに目を細める。 「僕、命と、ずっと…ずっと、一緒にいたいの」 「うん」 「…でも、僕ね、何も出来ないの」 「………………」 「なのに、命といたら、命…嫌ってする…?」 ユキと出会ってから、まだそんなに時間は経っていない。 手放すならきっと、これが最後のチャンスだ。 …けれど、そんなことはしない、出来るはずがない。 俺の世界で、ユキはもういなくてはならない存在になってしまった。 「…嫌って、するわけねえだろ。むしろお前がいなくなる方が嫌だ。」 「…そうなの?」 「ああ」 ユキを強く抱きしめる。 苦しいって言葉も聞こえないふりをして。 暖かい熱と、小さく聞こえる鼓動にこんなにも安心する。

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