「ユキ」 「なあに…？」 きっとこのままじゃダメだ。 そう思って、まずはユキの不安を無くしてやらないと、とユキの目をじっと見ながら口を開く。 「やっぱり昨日見た男達が怖いか？」 「っ！」 ビクッと大きく震えたユキは不安そうにゆっくりコクりと小さく頷いた。 「そいつらがいなくなったらお前は安心出来る？」 もし、そうなら、この際どんな手段でもいいや。なんて思う。トラには怒られたばかりなのに。 「僕、命と一緒、いたら…大丈夫なの」 「でも、怖いんだろ？思い出して」 「うー…」 眉間に薄くシワを寄せて辛そうな顔をしたユキ。ブサイクな面、眉間にツン、と触れるとそれは無くなって元の可愛い顔に戻る。 「ユキのされて嬉しいことって何？俺に何されたら嬉しい？それと、何されるのが嫌？」 ユキには少しだけ難しい質問だったようで、またブサイクな顔に戻って考える。 少し待っているとユキの小さな口が開いて、途端、言葉が溢れる。 「僕、命と遊ぶ…好き。ちゅーも、ぎゅーも…全部全部、好き。命は、僕の嫌なことしないの」 そう言って俺に触れるだけのキスをしてきた。 こうするのが好きだと笑って。驚いて動けない俺を見て、何かを勘違いし不安を感じたみたいで、そっとユキを撫でて俺からも触れるだけのキスをした。 笑顔になったユキに「もう１個、質問」と言うと、コクリと頷く。 「何をしてたら安心する？トラといるときは？」 「トラ…さん…？」 これで安心する。って言われたら少しムカつくけど、でももしそう言うのなら、ユキを少しの間トラに預けた方がいいんだろうか、とか。 ユキが安心出来るように、何とかしてやりてえと思う。 「僕、トラさん好き…でも、違うの」 「違う…？何が？」 「命が、いい。トラさんも好き、命はもっと、好き。命の抱っこ、お胸、ぬくぬくなるの」 自分の胸を押さえたり、俺の胸に顔をぐりぐりと埋めたり、地味に痛いけど可愛いから何も言えない。 「トラより、俺のことが好き。…じゃあ鳥居は？」 「夕くん、好き」 「俺より？」 「…違う」 どっちが好き？って小学生がするような質問をしてしまう俺。それにも素直に答えてくれるユキは少しだけ赤く頬を染めている。 俺の知らない奴ならまだしも、知ってる奴に好きの度合いを負けたくない。 そう思ってしまっているということは、俺はもうユキのことが本当に好きであると認めるしかない。 だんだんと心臓の動きが速くなる。 「命、トクトク…速い…」 「言うな」 そして少し暑くなってしまいそうなくらい体温が上がっているのもわかった。