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第82話
「出張だぁ!?」
翌日の昼間、早河に約一週間の出張を命じられ思わず叫んだ。
「若の付き添いだ」
「どこに行くんだよ」
「N県」
「何で俺なんだよ…」
「お前だけじゃねえぞ、赤石も一緒だ」
がくりと肩を落とす。つい昨日ユキに傍にいると言ったばかりだってのに。
「若の付き添いって、若は何しに行くんだよ」
「集まりがあるんだと」
「はぁ?」
「お前、去年も行ってただろうが。」
「…覚えてない」
頭をフル回転させるけど思い出せない。むしろ去年は行ってない気しかしない。
「とりあえず、これは決定事項だ」
「みっちゃぁん、諦めて、俺と仕事しようね?」
「……くそ…」
若の付き添いはいいけど、一週間にもなると流石にユキが嫌がるに違いない。
深い溜め息を吐いた。
若に出張について行くという事は早河が報告していたらしいが、俺と赤石ではその話すらしていなかったから、赤石と二人で若の部屋に向かう。その途中で鳥居に会って俺に飛び付こうと走ってきたところを赤石に遮りられていた。
「なんでぇ!赤石さん邪魔しないでくださいよぉ」
「今は俺のみっちゃんだからダメ!」
「えぇ、赤石さん寝惚けてるんですかぁ?」
「寝惚けてないよ、お前こそそうなんじゃないの?」
「…ムカつきますねぇ」
二人が言い合ってる中、俺はユキの事しか頭になくてどうしようか悩んでいた。ユキの伝えたらどんな反応をするだろう。怒る?泣く?…きっと後者だろうな。
その時、鳥居がいるじゃないか。と気づいて目の前にあった赤髪をガシリと掴む。
「え?えっ、何?何ですかー!」
「鳥居、あとで話がある、家に来い」
「わーい!聞きました赤石さーん!命さん直々にお呼ばれしちゃったぁ」
「みっちゃん!!何で!!」
ギャーギャー言う赤石は無視し、鳥居と別れて再び若の部屋にまで向かった。
***
部屋の前について、中にいるはずの若に向かい声をかける。
「若、失礼します、黒沼です」
「赤石でーす、失礼しますー!」
赤石が勝手に若の部屋を開ける。若はそんな赤石を咎めることもせずに「よっ」とソファーに座り手をヒラヒラと振っていた。
「若ぁ聞いてくださいよぉ!」
「おう、聞いてやるから抱きつくのやめろ」
抱きつくなと拒否されているのに若から離れない赤石の頭に、思い切り拳を落とした若は俺を見て笑う。
「赤石と命がついてきてくれるんだな、ありがとな」
「…いえ、こちらこそ…」
本当はユキと一緒にいてえけどな!!そんな本音がバレないように無表情を決め込んだ。
それから赤石が若に愚痴りはじめて俺は面倒になって一足先に若の部屋から出た。
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