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第84話
ピンポーンと軽快な音がなり玄関に向かう、そこには鳥居がいて……なぜか赤石もいた。
「夕くん…!こんばんは…」
「こんばんはぁ!実はユキくんにプレゼント持ってきたよー!」
「…プレゼント…?」
「ふふ、じゃーん!お菓子!お菓子にアイスに、ご飯食べたらこれ食べようね?」
「わぁ……あり、がとう…夕くん…」
玄関でそんな会話をする二人の横で俺は赤石に抱きつかれて眉を寄せていた。何故お前が居る。
「はぁ……とりあえず中で話しろ」
「はぁい。ユキくん、リビング行こう?」
「ふふ、夕くん、行こう」
赤石が俺から離れようとしないので靴を脱がせて引き摺るようにリビングに向かう。
「お前はなんで来たんだよ」
「いいじゃんかぁ!鳥居だけズルいし!!俺もみっちゃんと仲良くしたい…」
「……今度1週間も一緒にいるじゃねえか」
「それはそれ、これはこれだよ。」
リビングに入ると鳥居とユキが楽しそうにソファーで話していてあいつら本当仲良いなぁ、と少しだけ鳥居に嫉妬したり。
「みっちゃぁん、俺、酒飲みたいよ」
「じゃあ早く椅子に座れよ、取りに行けねえだろうが」
「俺をつれてって」
「重たいんだよ!!」
赤石を落としてキッチンにいく、リビングから「みっちゃんひどいよぉぉぉ」と声が聞こえてきたが無視をした。
少しするとキッチンにユキがとてとてと歩いてきた、その顔は怒っているように見えなくもない。
そのまま足にぎゅっとしがみついてきてどうした?と聞くけど返事がない。
足からユキを離させてユキの目線と合うように膝をつく、ユキの手を握ってもう一度どうした?と聞いてみた。
俯きたまに顔をあげて、目が合えば気まずいのか視線を逸らす。口はツン、と尖っていてその唇を摘まんでやりたいと思っているとユキが首を振って、手を離せばやっと話し出した。
「…赤石さん……ずるい…」
「は?赤石?」
「…命…ずっと、一緒……」
「……悪いユキ、意味がわからない」
そう言うと泣きそうになったユキは俺から逃げようとしだして咄嗟にユキの手を強く握る。
「ユキっ!!」
少し声を荒げるとビクッと震え固まってポロポロと涙を流し出し、それがユキとユキの手を掴んでる俺の手にポタポタと落ちてきて。
何で泣いてるんだ、と頭を抱えたくなった。
「…んっ…んっ…」
「…泣くな」
「…ごめ、なさい…僕、お話…下手…っ」
「謝らなくて良いから、どうした?俺と赤石が一緒にいるのが嫌なのか?」
コクコク首を縦に振る、その度に涙は零れて手を濡らしていく。ユキの手を離してももう逃げることはしないでそこでえぐえぐと泣くだけ。
「…僕も…命と一緒…いたい……っ」
「ああ」
「命…好き…好き…」
そう言って俺の首に腕を回し強く抱きしめてくる、俺もユキの背中に手を回してポンポンと撫でた。
ユキが今こんな状態なのに、出張なんていける筈がない。
どうしたものか…と小さく溜息を吐いた。
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