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第85話

ユキを抱き上げて落ち着かせようと背中を撫でる。そういえば赤石が酒って言ってたっけ。冷蔵庫からビールを出してリビングにいる赤石とついでに鳥居にそれを渡した。 「ありがとうございますー!」 「みっちゃん、ありがとうー!…ユキくんおネム?」 「ちょっとな」 とりあえずユキと二人になった方がいいのかもしれない、寝室に入って鍵をかけユキをベッドに下ろした。 「落ち着いたか?」 「うん…」 「……嫉妬でここまでなるのか」 「しっと?」 「焼きもちだよ」 焼きもち?首を傾げたユキは俺に腕を伸ばしてくる、まだ抱っこしろって言うのか。 「また抱っこかぁ?」 「…抱っこ…違う……」 「じゃあギューか?」 「うん、ギューして…あと、ちゅーも…」 何でキスまで強請られてるんだ。と思いながらもユキを抱きしめて頬に、額に、唇に、俺のそれをくっつけた。 「気持ちぃのが、いい」 「あのなぁ、今は鳥居も赤石もいるだろ?」 「…でもぉ……」 「我が儘言うならもうキスしない」 「え…ぇ…」 そう言うとまた泣き出してそんなにか、と思わず笑ってしまう。 「僕、我慢…でも、でもぉ…っ…」 「…でもじゃなくて、我慢するんだ。わかった?」 「……わか…た…」 納得いってないって顔。ユキの髪をクシャクシャと撫でて頬に流れる涙を親指で拭った。 リビングに戻ると鳥居と赤石が言い争っていて何だよ…と腹立たしくなった。 「はぁん?赤石さん俺のこととーってもバカにしてますよねぇ?」 「うるせえっ!お前のことは前から好きくねえんだよぉ!!」 ビールの空き缶が何本も転がっている、酔ってんのかよ。 「…命…夕くん…お顔怖ぃ…」 「ああ。あいつ酔ったらめんどくせえから近寄るのやめとけ」 「うん…」 ユキでも面倒だとわかったのか俺にぴったりくっついて鳥居のところには行こうとしない。 「俺飯作るけど…ユキも作る?」 「お手伝い……!」 「やるか?」 「うん!」 椅子をキッチンに運んでユキの大きさでもちゃんと台に手が届くようにする。 「俺が切った野菜を水で洗ってくれ。ちょっとで良いから。」 「うん!」 リビングからはギャーギャーうるさい声、もう少ししたらきっと鳥居はもっと面倒になる。なんせあいつは─────······

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