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第86話
「だってぇ…俺もッ…俺だってぇッ…」
「はいはい」
「あのね、俺だって頑張ったんです…ぅっ、うっ…」
「泣くなよ」
そう、鳥居は泣き上戸。普段からストレスが溜まってるのだろうか、変に酔うといつもこうだ。
飯を食ってるユキに絡みに行こうとした鳥居を止めて、俺の隣に座らせてさっきから泣いてるこいつを宥める。
ユキは鳥居を心配そうに見ていて、赤石はニヤニヤしていて。
「ねぇ…ねえっ!命さんっ」
「よしよし」
「ねえもっと…もっと撫でて…」
鳥居が肩に額をグリグリと押し付けてきて、その赤い髪をクシャクシャと撫でる。俺に乗せてくる体重がだんだんと重たくなってきて、もう寝そうなんだと溜息を吐いた。何の為に鳥居を呼んだのかわかんなくなっちまった。
「鳥居、寝るなら部屋に行けよ」
「運んでぇ…」
俺の首に腕を回し背中に乗ってくる。はぁ?と思ったが仕方ない。ここで寝られても後々困るし。鳥居を背負って、もうこいつ専用の部屋になりつつあるそこに行き、ベッドにゆっくりと降ろす。
鳥居の閉じられた目からポロポロと涙が零れていてティッシュでそれを拭ってやる。そうしたら薄く目を開けて口許を緩めて笑いだした。
「何笑ってんだ」
「命、しゃん…やさ、し…からぁ」
呂律が回らなくなってきてるじゃねえかよ。鳥居の頭を撫でて早く寝ろと言うのにその手をとって頬に寄せてスリスリとまるで猫みたいだ。
「俺、もうやだ…」
「…何が」
「わか、ない…」
そう言って眠った鳥居、閉じた目からまた一筋涙を流した。
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