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第89話
赤石は満足した様子で部屋に帰っていき、俺は片付けがあったのでしばらくそのままリビングで起きていた。
寝る気にはなれなくて冷蔵庫からビールを取る。前はこうやって夜によく一人で酒飲んでたっけなぁ。前はどうとも思わなかったのに、今はとても寂しい。
「…はぁ」
最近よく溜息が出るようになった。体も前より少し怠い。まだユキといる生活に慣れてないからだろうか。ぐーっと伸びをしてついでに欠伸を零す。
…さあ、部屋に戻ろう。前みたいにユキが夜中に起きてこないようにソファーで寝るのはやめたほうがいい。
中身の無くなった缶を潰してキッチンに置き寝室に戻った。
ベッドに近付けばユキの左手が何かを探すようにシーツの上を行き来している。その顔は険しくてユキに似合わない。そこに俺が寝転ぶと俺に擦り寄ってきて、顔も軽く笑みを浮かべている気もする。
そんなユキを撫でながら溢れてくるのは罪悪感。
「…ごめんな」
ただ謝るしかなかった。
俺なんかがお前を拾ってしまったせいで、お前は辛い思いをするかもしれない。
「ごめん」
他の人に拾われていたら、もっと…ついついそんなことを考えてしまった。
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