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第92話
繁華街ではどうしても時間が早く流れているように見える。まるで自分だけが取り残されているような気分だ。忙しなく歩く人に楽しそうにする家族。ゲラゲラ笑う人に女をナンパする男。賑やかだなぁとベンチに座りながら煙草を咥える。
俺が見る限り特に変わったことはない。至って普通。ただ平日の午前という時間わりには高校生が多いなと思っただけ。
あと30分くらいしたら俺も帰れる。何事もなく過ごしてえなぁと思った矢先。すぐ近くで鉄パイプを引き摺るような音や男の怒鳴り声が聞こえてきた。
溜息を吐いてその様子を見にいくために重たい腰をあげた。
ビルとビルの間、少し汚ならしい薄暗いそこでそれは起きていた。
見たことある人物とその仲間が二人。そいつらは何人もの武器を持った男たちに殴られていて、痛そう。高校生の喧嘩ごときに俺たちのようなやつが首を突っ込むのは極力避けたい。誰かが死にそうになったくらいにこの喧嘩を止めよう。
よく様子が見えるところまで移動してそいつらを眺めていた。
って、思い出した。
あの見たことあるやつ、トラのところに居た匠って奴じゃねえか。ユキを迎えに行ったときにあの人!ってユキが指差してた。その時チラッと見たくらいだからそんなに記憶になかったけど。ボッコボコにやられてる。
そんな様子を眺めいると、相手の一人が高々と鉄パイプを振り上げる。きっとそれを頭から血を流してる匠めげけて止めを刺そうと降り下ろすつもりだろう。そろそろかな、と砂利を踏み音を鳴らしながら近づき振り上げられた鉄パイプを後ろから掴んだ。
「っ!何だテメェ!!」
「はいはい、もう終わりだ。」
「はあ!!?邪魔すんじゃねえよおっさんっ!」
おっ、さん…?
え?俺おっさん…
「……何でもいいけど、もしこのまま続けるつもりなら連行すんぞ」
「テメェ、警察か!?」
「そんなんに見えるか?大体お前らさぁこんなん使って人数集めないとこいつらを殺れないのかよ。くっそ弱いから早く消えろ」
匠を見ると血を流しながら俺を見て誰?と首を傾げてる。
「ほら、お前ら消えないと浅羽組のお世話になるぞ。」
「浅羽、組…?」
「あと5秒、4、3、2……」
そう言っている間に逃げていったやつら。目の前でしゃがんで血を流す匠たちは動くのが難しいのか手や足に力をいれたりしていて、そのたび痛みで顔を歪めていた。
「大丈夫か?」
「えっと…」
「とりあえずトラのところに運んでやるよ」
「…えっ…あの…ありがとうございます」
車を呼んで後部座席に3人を乗せる。そのままトラのところへ…って当たり前だけどユキもいるんだよな。
「……はぁ」
資料作っといた方がよかったかも。
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