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第93話

トラのところについて匠たちを降ろし建物内に入った。ユキとトラがキャッキャとはしゃいでる声が聞こえて楽しそうでよかった、と少し安心。声がする部屋を覗き込む。 「トラー!」 「あら?命じゃないの。もうユキくんのお迎え?」 「違う、今仕事中。こいつらのこと診てやって」 ユキが俺の方に寄ってこようとするのを止めて血を流す匠をトラに見せると「あらら~」と言いながら治療の準備をする。 匠をトラに預けてからユキの方を向いて両腕を広げた。ユキは満面の笑みで俺の腕の中に入ってくる。 「帰るの…?」 「違う、まだ仕事なんだ」 「お仕事…」 「あとでまた迎えに来る」 「…うん」 それから少しだけユキと話をして、組へ帰った。早河にさっさとさっきのことを報告してソファーに寝転ぶ。すると突然髪を触られて驚いてビクッと体が震えた。 「お疲れ様ぁ」 「…赤石か」 「ねえ、俺も疲れたから寝転ばせて?」 「床に寝ろ。」 「酷いよみっちゃん!」 赤石を無視して目を閉じる、少しだけ休んでから仕事しよう…意識はすぐに沈んでいった。 *** ドンッと結構な衝撃を受けて目を開けると早河が俺を睨んでいた。何だよ…と睨み返すと腹の上に重たい資料が落とされる。 「う"っ…」 「寝てねぇでさっさと仕事しやがれ」 「起こして」 腕を上にあげ早河に向かって手をヒラヒラと振ると溜息を吐きながらも俺の手を掴んで起こしてくれた。資料を机の上に置いて首をコキコキと鳴らしぐぅーと伸びをする、時間は正午を過ぎた頃。 「どうせ昼飯食わねえんだろ。今のうちに終わらせとけ」 「お前はぁ?」 「俺は飯食う」 「んー…」 眠たくて適当な返事を返すと頭をパンと軽く叩かれる。 「起きろ。」 「起きてる」 「何か飲むか」 「珈琲…」 ぐでぇと背凭れに凭れて長い息を吐く。最近悩むことがあったりと忙しかったからもうしんどい。寝ていたい。 「わかってると思うが、お前明後日からだぞ」 「え?」 「だから出張だよ」 「…あ」 少しだけ目が覚めた。

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